2008 Fiscal Year Annual Research Report
抗うつ薬・気分安定薬およびBDNFによる脳内ミクログリア活性化の制御機序解明
Project/Area Number |
20790847
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
溝口 義人 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 特別教員 (60467892)
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Keywords | 抗うつ薬 / BDNF / ミクログリア / うつ病 / 気分障害 / 薬理学 / 神経生理学 |
Research Abstract |
うつ病を含む気分障害発症の背景に、海馬での神経新生の障害が指摘されており、抗うつ薬と気分安定薬の治療効果には、脳由来神経栄養因子(BDNF)産生放出の増加と神経新生の促進が関与する可能性が示唆されている。一方、脳内マクロファージ(ミクログリア)活性化はBDNFのほか、炎症性サイトカインやフリーラジカル等の神経細胞障害因子を放出し、神経新生に大きく影響する。本研究は抗うつ薬・気分安定薬およびBDNFによるミクログリア活性化の制御メカニズムを解明することにより、気分障害の病態把握と治療薬開発に資することを目的とする。 これまで報告のなかったBDNFのミクログリアへの直接作用について、Fura-2AMによる細胞内カルシウムイオンイメージングを用い検討した。BDNFはミクログリアにおいて細胞内カルシウムイオン濃度を持続的に上昇させた。BDNFのミクログリアにおける細胞内カルシウムイオン濃度上昇にはTruncated-typeのTrkB受容体活性化、PLC系のリン酸化、さらにTRPチャネルの活性化が関与することを見出した。また免疫染色とRT-PCRによりミクログリアにおいてTruncated-typeのTrkB受容体が発現していることも確認した。Griess法によりNO放出測定を実施した結果、BDNFはミクログリア活性化を抑制し、抗炎症作用をもつ可能性が示唆された。 さらに今回、抗うつ薬を前投与したミクログリアにおいて、BDNFによる細胞内カルシウムイオン濃度上昇が増強されることも見出した。抗うつ薬にはミクログリア活性化抑制作用があり、抗炎症作用を発揮することが知られている。抗うつ薬あるいは気分安定薬によるミクログリア活性化の抑制作用の細胞内メカニズムとして、薬剤によるBDNFシグナリングの制御とくに細胞内カルシウムイオン動態の制御が関与する可能性が高い。
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