2008 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症に対する自己細胞移植療法の可能性-有効性に関する事前体外診断法の確立-
Project/Area Number |
20790850
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小野 貴文 Sapporo Medical University, 医学部, 研究員 (50438024)
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Keywords | 統合失調症 / 神経幹細胞 / 再生医療 / 細胞移植 / 神経保護 / 神経新生 / Poly I : C / 抗精神病薬 |
Research Abstract |
我々は、統合失調症の病態との関わりが強く指摘されている脳諸領域の萎縮の問題および脳神経回路網の異常の観点から、統合失調症に対する神経幹細胞移植療法の可能性について解析・検討している。 はじめに、ラット胎仔脳より採取・培養した神経細胞および神経幹細胞を用いて、神経幹細胞の持つ神経保護能および神経新生促進能についてin vitroで解析した。統合失調症の病態と関連が強いと推察されているMK-801および神経栄養因子除去による神経細胞障害に対しての神経幹細胞の保護的効果についてMTT法にて評価した。その結果、神経幹細胞が神経細胞に対する保護能を持つことが示された。また、MK-801および神経栄養因子減量により障害を加えた神経幹細胞(脳内の内在性細胞としての神経幹細胞)に対して別の神経幹細胞(移植細胞としての神経幹細胞)を処置し、神経幹細胞(前者)の神経細胞への分化に与える影響についてTuj-1-EHISA法にて評価した。その結果、神経幹細胞が神経新生促進能を持つことが示唆された。 次に、in vivoにおいて、病態モデル動物に対する神経幹細胞移植の効果を評価した。合成サイトカインリリーサーであるPoly I : C処置による統合失調症モデルラットに対して、神経幹細胞を尾静脈より注入し、約6ヶ月後にOpen-field試験、Social Interaction試験、新奇物質探索試験による行動評価を行った。Poly I : C処置群では、運動量の減少、積極性の低下及び常同性の亢進、社会性行動の減少、認知記憶の障害が認められ、統合失調症慢性期症状との関連性が推察された。また、神経幹細胞移植を行うことにより、それらの障害が抑制されることが判明した。 これらのことより、経静脈的神経幹細胞移植が、神経保護・神経新生促進という観点から、統合失調症の病状の進行を抑制する新たな方策となる可能性が示唆された。
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