2009 Fiscal Year Annual Research Report
食道癌の治療効果修飾因子の解析と新規治療薬剤の臨床応用に関する基礎的検討
Project/Area Number |
20790879
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Research Institution | Kanagawa Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
野中 哲生 Kanagawa Cancer Center Research Institute, 医療局 放射線腫瘍科, 医長 (40375556)
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Keywords | 食道癌 / 放射線治療 / 放射線生物学 |
Research Abstract |
【目的】進行期食道癌の治療成績は外科手術あるいは放射線療法でも満足する結果は得られていないのが現状である.これまでの臨床的検討から患者背景によって進行食道癌の治療成績に差があることは明らかになりつつあるが,個々の症例による放射線治療あるいは化学療法に対する感受性の違い,また治療後の予後の予測は現時点では困難であると思われる.本研究はヒト由来の食道癌細胞株を用いて放射線照射に対する感受性について熱ショックタンパク(Hsp)に注目し分子生物学的なアプローチから進行期食道癌の治療成績向上に貢献しうる可能性について検討する.【方法】細胞はヒト由来食道扁平上皮癌細胞株(TE-1)を用いたが,今回はヒト由来頭頸部癌細胞株(LMF-4)についても検討を行った.X線照射後の細胞生残率はコロニー形成法で検討し,熱ショックタンパク90(Hsp90)シャペロンコンプレックス阻害剤には17-allylamino-17-demethoxygeldanamycin (17-AAG)を用いた.17-AAGはDMSOに溶解後,至適濃度に希釈し照射の24時間前から細胞に接触させた.処理後の細胞周期はフローサイトメトリーで検討した.【結果】17-AAGによる細胞毒性は時間および濃度依存性であったが,照射に併用する濃度は6時間の接触で細胞生残率が80%以上あった100nMとした.照射に17-AAGを併用すると細胞生残率は有意に低下し相加的な殺細胞効果が認められた.今回用いた細胞株は照射後G2/M期に分布したが(G2ブロック),その割合は照射線量依存性に増加した.放射線照射に17-AAGを併用すると照射線量依存的なG2/M期の割合は増加しなかったが,TE-1, LMF-4ともにG2/M期が有意に遷延していた.【結語】放射線照射に17-AAGを加えると相加的な生残率低下を認めた.これは本薬剤によるG2/M期の遷延が一因であると思われた.
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