2009 Fiscal Year Annual Research Report
EGFR新規プローブの開発とPETへの有効利用評価
Project/Area Number |
20790921
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
齋藤 有里子 National Institute of Radiological Sciences, 分子イメージンゲ研究センター, 准技術員 (20446537)
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Keywords | 画像診断 / 放射性医薬品 / 分子イメージング / 腫瘍イメージング |
Research Abstract |
がん診断において、陽電子放出断層撮影法(PET)は細胞内生化学的変化や生理機能について優れた画像が得られるため広く用いられている。がんのPET診断法の充実化には、がん細胞特異的に発現や変異している分子を標的とした新規PET薬剤の開発が鍵を握る。EGFRは多種のがんに発現する受容体で、過剰発現や構造変異による異常な活性化が細胞のがん化や悪性化の一因となることが知られている。そこで本研究では、活性型EGFRを標的とした腫瘍画像化薬剤の開発を目指した。EGFRのアダプター分子であるGrb2のEGFR結合部位(SH2ドメイン)を薬剤の主構成分子とし、基礎的検討を行い、PET薬剤としての有用性及び結合性を利用した治療薬剤としての可能性にっいても検討した。 昨年度の成果より、SH2ドメインを一つ有する薬剤(TSF)の細胞内滞留性とEGFRの活性とは強い相関があることが明らかとなった。そこで本年度は、1.担がんマウスでのTSFの体内動態検討、2.腫瘍のPET画像の取得、3.担がんマウスの治療実験の3つを研究項目に掲げた。1の実験ではTSFを^<125>I標識し用いた。TSF投与後のEGFR過剰発現腫瘍(P)では、経時的に取り込みが上昇したのに対し、EGFR低発現腫瘍(N)や正常組織では減少した。投与後1時間で腫瘍(P)対組織比は最高値に達した。しかし、生体内での速やかな分解が予想され、腫瘍の画像化(2の実験)には至らなかった。今後、分子修飾による細胞内導入の向上や標識法の改善をすることで、腫瘍の画像化が期待できる。3の実験では、SH2ドメインを二つ有した薬剤(TSSF)も合成し、TSFまたはTSSFを細胞に処理した。その結果、両薬剤の長期処理では細胞増殖抑制が観られた。またTSSF処理では細胞内シグナルにも影響を与えた。さらにTSSFはEGFR過剰発現腫瘍への長期投与でも有意な腫瘍の成長抑制が得られた。本研究を通して、Grb2のSH2ドメインは活性型EGFRを標的とした画像化及び治療薬剤の基本骨格として有用であることが示唆された。
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