2009 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティクス治療薬による腫瘍抗原発現とT細胞感受性の増強
Project/Area Number |
20790930
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
原嶋 奈々江 Shimane University, 医学部, 助教 (60345311)
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Keywords | 癌 / 免疫学 / 薬剤反応性 |
Research Abstract |
選択的且つ効果的な癌細胞死を誘導する分子標的治療の有効性を検討するために、特に前立腺癌細胞におけるエピジェネティク薬剤による癌特異抗原遺伝子やHLA分子の発現と細胞増殖能への影響の解析に取り組んだ。前立腺癌細胞株LNCap、PC-3、DU145などをDNAメチル化阻害剤5-aza-CdRにて処理後細胞増殖反応を検討したところ、いずれの細胞株でも増殖抑制はほとんどみられなかった。一方、ヒストン脱アセチル化阻害剤(HDACi)で処理した前立腺癌細胞株は、いずれも低濃度で顕著な細胞増殖抑制効果を示した。他の実験結果と併せて、HDACi単独投与でも十分に腫瘍殺傷効果があることを示唆したが、そのメカニズムがまだ不明である。腎細胞癌や肺癌で高率に発現する癌関連抗原CA9の発現欠失あるいは回復・増強やそれらに対する各種エピジェネティク薬剤処理の影響を調べるため、CA9及び各種アポトーシス関連遺伝子のmRNA発現解析を行ったところ、HDACi処理後のCA9及び細胞死にかかわる遺伝子の発現において有意な差は見られなかったため、細胞死の機序の解明には至っていない。他方、近年癌に対する適応免疫の誘導において重要な働きを担っていると報告があるToll様受容体(TLRs)の癌細胞株での発現を新たに確認した。TLRのなかでもTLR3のリガンド(pIC)で前立腺癌細胞株を刺激・培養したところ、著しい細胞生存率低下が認められた。pIC処理した前立腺癌細胞では、細胞周期を調節するタンパクの発現低下やアポトーシス関連タンパクの発現増強が判明した。単に癌細胞の細胞死を誘導するだけでなく、そのメカニズムを詳細に解明することで、今日の癌免疫療法が抱える問題点を克服する一助となり、さらに臨床応用に近付けられるよう、解析を続けたい。
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