2009 Fiscal Year Annual Research Report
マウス肺移植モデルを用いた虚血再還流障害おける基礎的研究
Project/Area Number |
20790988
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山根 正修 Okayama University, 病院, 助教 (20432643)
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Keywords | 肺移植 / 虚血再灌流障害 / Egr-1 / サイトカイン |
Research Abstract |
肺移植後の虚血に対する肺障害に強く関与する因子として、様々な分子レベルでの影響が確認されつつある。 温虚血と冷虚血との違いから温虚血特有の変化を明確にすることとし、分子レベルで検討した。SD系ラット左肺を、温虚血なし(0WIT群)、30分温虚血(30WIT群)、180分温虚血(180WIT群)に分け片肺移植を行った。全て総虚血時間が240分になるよう冷虚血時間を加えた。1時間再灌流し動脈血液ガスを測定。組織をウェスタンブロット、RT-PCRにて評価した。動脈血酸素分圧では、0WIT、30WIT群に比べ180WIT群で有意に低下していた。それぞれの群についてマッキナーゼ(MAPK)経路の代表的な3経路(ERK、JNK、P38)の活性化の違いについて検証した。MAPK経路は、0WIT、30WIT群と比べ180WIT群では、ERK、JNKで有意な活性化を認め、p38で有意差がなかった。転写因子Egr-1 (early growth response gene-1)、ATF-3 mRNAも180WIT群で有意な発現を認めた。サイトカインはIL-1β、IL-6、MCP-1にて180WIT群で有意差をもち発現していたが、TNF-α、MIP-2で有意差は認められなかった。温虚血によるPGDはERK、JNK経路の活性化やEgr-1、ATF-3の増幅によることが示唆された。現在ERK、JNK経路の抑制やノックアウトマウスによるIRIの検討を継続している。 次に炎症に深く関与していると考えられている転写因子Egr-1について肺移植後の移植肺機能との関連性を検討した。マウスを用いた左片肺移植モデルを用いた。ドナーより摘出した肺を長時間の虚血後に移植すると、再灌流障害により肺機能は著しく悪化する。しかしEgr-1がノックアウトされた肺は摘出後に長時間保存した後でもレシピエントに移植後も良好に機能した。IL-1B、MIP-2、IL-6などの炎症性サイトカインの発現の抑制を認めた。またレシピエント側のEgr-1をノックアウトのみでは移植肺(ドナー側)のノックアウトに比して肺障害は抑制されなかった。本研究では移植肺内でのEgr-1を抑制することにより炎症性サイトカインが抑えられ、長時間保存後の再灌流障害を抑制される可能性が示唆された。
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