2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20791004
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山田 清文 Gifu University, 医学部・附属病院, 医員 (40402200)
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Keywords | 脳腫瘍幹細胞 / 起源 / 階層性 |
Research Abstract |
脳腫瘍における腫瘍幹細胞の起源については、正常神経幹細胞や、神経前駆細胞、成熟したグリア細胞など諸説ある。従来、腫瘍発生に関しては、正常細胞への遺伝子変異の蓄積等によって癌化した細胞が無秩序に増殖して生じると考えられてきた。しかし、近年は腫瘍幹細胞群に血液幹細胞の成熟過程にみられるような階層性があることが示唆されてきており、個々の腫瘍幹細胞の詳細な解析によって新たな腫瘍発生の過程が明らかとなることが期待されている。脳腫瘍、特に膠芽腫では複雑な遺伝子背景を持っており、現在でも治療が最も困難な腫瘍として知られる。従って、この系譜、つまり脳腫瘍における腫瘍幹細胞のルーツが判明することは、個々の腫瘍に応じた治療、すなわちテーラーメイド治療への新たな糸口となる可能性があり、ひいては治療効果の向上につながりうる。 我々は、これまで、脳腫瘍(主に膠芽腫)の手術摘出組織より脳腫瘍幹細胞の同定といくつかの細胞株の樹立に成功し、その性質について解析を行ってきた。ルーツの検討にあたって、まず、樹立した細胞株についてcDNAアレイ解析を行い、神経幹細胞に関連した遺伝子群や腫瘍化に関する遺伝子群についての発現状態を調べた。解析においては細胞株の未分化状態、分化状態、脱分化状態間での各遺伝子の発現の変動や既存の膠芽腫細胞株との比較も行った。 今までの解析では、腫瘍幹細胞株が神経幹細胞の増殖維持に必要な遺伝子群の他、膠芽腫で報告されている癌原遺伝子群の多くに発現増加を示し、また未分化状態と分化状態で発現パターンが劇的に変化するものがあることを確認している。注目できる結果の一つとして、胚性幹細胞の維持に必須といわれるLIFが分化状態でも高発現する傾向があることが挙げられる。生体内ではこれが周囲の幹細胞の分化を阻止している可能性があり、腫瘍幹細胞の系譜を維持する上で重要な因子の候補であると考えられた。
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