2009 Fiscal Year Annual Research Report
凝固活性抑制下における癌転移関連蛋白の解析および転移抑制能の評価
Project/Area Number |
20791031
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
淺沼 邦洋 Mie University, 医学部・附属病院, 診療等従事者 (20378285)
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Keywords | B16 melanoma / 肺転移 / 血液凝固 / 血液凝固抑制マウス / 高肺転移株 |
Research Abstract |
血液凝固の癌転移に対する関与は一般的に知られており、血液凝固の亢進は癌転移の増悪方向へ、血液凝固の抑制は転移の減少方向へ働く。われわれの研究でも、ワーファリンにより作成した凝固抑制マウスに対し、B16 melanoma細胞を尾静脈注射したところ、血液凝固抑制度依存的に肺転移が抑制されるという結果を得た。またさらに、フィブリノゲン欠損マウスでは、癌細胞の尾静脈注射後に、肺での癌細胞着床量は、尾静脈注射4時間後より時間経過とともに減少することが報告されている。このようなin vivoにおける、肺転移に対する血液凝固の効果は、尾静脈注射から肺に着床後数時間というごく短い期間で発揮されると考えられる。以上のことから、現在一般的に行われている肺転移実験系では、癌細胞の肺血管への着床に対する血液凝固の関与が大きく、細胞固有の因子が血液凝固によりマスクされている可能性が考えられる。そこで我々は、血液凝固にマスクされていると考えられる因子を増幅させるため、ワーファリンにて血液凝固能を過度に抑制したマウス(Prothrombin time 1%以下)を作成し、B16 melanoma細胞を尾静脈注射し、肺転移を形成したB16細胞を分離培養し、再度凝固過抑制マウスに尾静脈注射するという作業を9回繰り返し、凝固過抑制状態においても高度に肺転移を形成するB16細胞株(Wa9)の樹立に成功した。また、wildマウスに対しても同作業を9回繰り返し、wildマウスに対する高肺転移株(Co9)を作成した。血液凝固にマスクされていると考えられる、肺血管に着床するための癌細胞固有の因子の発現は、Wa9で高く、Co9では低いことが予想される。その因子をスクリーニングするため、現在Wa9、Co9、wild B16の発現遺伝子をDNA arrayにて解析中である。
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