2009 Fiscal Year Annual Research Report
体細胞由来人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた脊髄損傷治療
Project/Area Number |
20791052
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辻 収彦 Keio University, 医学部, 助教 (70424166)
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Keywords | iPS細胞 / 脊髄損傷 / 神経幹細胞 |
Research Abstract |
本研究の目的は、マウス体細胞由来人工多能性幹細胞(以下iPS細胞)より神経幹/前駆細胞を誘導し損傷脊髄に移植してその有効性を確認し、脊髄損傷への再生治療を実現させることである。iPS細胞は胚性幹細胞(ES細胞)と同様に高い増殖能と様々な細胞へと分化できる分化多能性を有する幹細胞である。iPS細胞が自家組織由来の移植細胞源になりうるという点からも、免疫学的・倫理学的問題はES細胞や胎児由来神経幹細胞に比べて少なく、臨床応用に極めて近い細胞供給源と考えている。本年度において我々は、Nanog遺伝子を(指標として樹立されたNanog-iPS細胞のうち安全性の確認された38C2クローンより誘導されたNeurosphereを脊髄損傷モデルに移植し、有効な機能回復を確認しており、そのメカニズムについて詳細な検討を行った。その結果、移植細胞は1)5HT陽性のserotonergic fiberのre-innervationを有意に促進しており、2)LFB陽性の髄鞘面積もビークル群と比較して有意に保たれていた。更には移植細胞はMBP陽性の成熟オリゴデンドロサイトへ分化し再髄鞘化に寄与していることも確認され、髄鞘形成不全マウスであるシバラーマウスの損傷脊髄へ移植すると、電子顕微鏡下に正常なミエリン鞘が形成されていることが確認された。このことから、移植された38C2由来Neurosphereが再髄鞘化に寄与していることが強く示唆され、移植後の機能回復に、移植細胞による再髄鞘化が重要であることが示唆された。
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