2008 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類脊髄損傷に対するHGFの有効性および治療法の確立
Project/Area Number |
20791053
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
北村 和也 Keio University, 医学部, 研究員(非常勤) (00383860)
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Keywords | 脊髄損傷 / 再生医学 / HGF / 治療 / 臨床応用 |
Research Abstract |
【目的】我々はラット胸髄圧挫損傷モデルに対してウィルスベクターを用いてHepatocyte growth factor(HGF)を髄内に供給することにより, 神経保護・血管新生・軸索伸長作用を介して有意な運動機能回復が得られることを報告した. そこで本研究の目的は, 前臨床試験として霊長類コモンマーモセット頸髄損傷モデルに対するヒト組み換えHGF蛋白(rhHGF)の有効性と安全性を検討することである. 【方法】1)成体コモンマーモセットの第5頚椎高位に圧挫損傷を作製し, 直後よりくも膜下腔にカテーテルを挿入し, rhHGFを4週間持続投与した(n=6). 対照群にはPBSを投与した(n=5). 2)術後12週までBargriptestにて上肢筋力を, 独自に開発したscoringにて上肢の神経学的機能を評価した. 3)損傷後1・3・12週に頚髄MRIを撮像し, 損傷範囲を同一個体で経時的に評価した. 4)損傷後12週目に脊髄の組織学的検討を行った. 【結果】1)rhHGF群で対照群に比べ有意に良好な運動機能回復が認められた.異常行轍は認めなかった. 2)損傷後12週自のMRI像では異常信号領域がrhHGF群で著明に縮小していた. 3)rhHGF投与群で髄鞘化面積が有意に保たれており, 皮質脊髄路を示すCaMK2-α陽性線維が損傷尾側においても有意に保たれていた. また, 脊髄後角におけるCGRP陽性C線維分布に両群問で有意な差を認めなかった. 腫瘍形成は1例も認めなかった. 【考察・結論】霊長類で特に発達した上肢の機能に注目することで, rhHGFのくも膜下腔持続投与により霊長類脊髄損傷に対して著明な治療効果が得られることを明らかとした. またアロディニアや腫瘍形成を認めず安全性についても確認できたことから, 本研究結果はrhHGFを用いた脊髄損傷治療が臨床応用へ結びつく可能性を示すものと考えている.
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