2009 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類脊髄損傷に対するHGFの有効性および治療法の確立
Project/Area Number |
20791053
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
北村 和也 Keio University, 医学部, 助教 (00383860)
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Keywords | 脊髄損傷 / 再生医学 / HGF / 治療 / 臨床応用 |
Research Abstract |
【目的】本研究の目的は,前臨床試験として霊長類コモンマーモセット頸髄損傷モデルに対するヒト組み換えHGF蛋白(rhHGF)の有効性と安全性を検討することである.【方法】1)成体コモンマーモセットの第5頚椎高位に圧挫損傷を作製し,直後よりくも膜下腔にカテーテルを挿入し,rhHGFを4週間持続投与した(n=6).対照群にはPBSを投与した(n=5).2)術後12週まで独自に開発したscoringにて上肢の神経学的機能を評価した.3)損傷後1・3・12週に頚髄MRIを撮像し,損傷範囲を同一個体で経時的に評価した.4)損傷後12週目に脊髄の組識学的検討を行った.【結果】1)rhHGF群で対照群に比べ有意に良好な運動機能回復が認められた.異常行動は認めなかった.2)損傷後12週目のMRI像では異常信号領域がrhHGF群で著明に縮小していた.3)rhHGF投与群で髄鞘化面積が有意に保たれており,皮質脊髄路を示すCaMK2-α陽性線維が損傷尾側においても有意に保たれていた.さらには損傷周囲におけるCaMK2-α陽性のinterneuronの分布がrhHGF投与群で多い傾向にあり、interneuronを介した新たなneural circuit構築に寄与した可能性が示唆された。また,脊髄後角におけるCGRP陽性C線維分布に両群間で有意な差を認めなかった.腫瘍形成は1例も認めなかった.【考察・結論】rhHGFのくも膜下腔持続投与により霊長類脊髄損傷に対して著明な治療効果が得られることを明らかとした.またアロディニアや腫瘍形成を認めず安全性についても確認できたことから,本研究結果はrhHGFを用いた脊髄損傷治療が臨床応用へ結びつく可能性を示すものと考えている.rhHGFくも膜下腔持続投与の毒性試験、脳脊髄液中の薬物動態試験をすでに開始している。
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