2009 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性脳障害の分子機構における好中球エラスターゼの役割に関する検討
Project/Area Number |
20791076
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
平田 孝夫 Yamaguchi University, 医学部・附属病院, 助教 (40420533)
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Keywords | 好中球エラスターゼ / 脳保護 / 一過性前脳虚血 / 海馬CA1 / 細胞外マトリックス |
Research Abstract |
[はじめに]これまでの検討でラットの一過性脳虚血・再灌流直後に投与される好中球エラスターゼ(NE)の特異的阻害薬(ONO)は神経細胞外マトリックスの傷害を軽減し(再灌流4~8時間),その後の海馬CA1の遅発性神経細胞死を抑制する可能性を報告した(Matayoshi et al., 2009).脳虚血により血管内で活性化したNEは,血液脳関門を通過し細胞外マトリックスを介し,神経細胞死のプロセスに影響を与える可能性が示唆される.しかし,再灌流1時間後に投与されるONOに神経保護効果をほとんど認めない.このことから,NEによるマトリックス傷害は再灌流1時間以内に生じ,投与可能なONOのtherapeutic time windowは限定されると推測される.最近の報告で,NEで活性化されるプロテアーゼ活性型受容体(PAR)は血管内皮細胞や海馬CA1神経細胞にも存在することがわかってきた.今回,PARアゴニストを用い,ONOの神経保護効果が打ち消されるかどうかを検討し,一過性脳虚血後のNEは細胞外マトリックスを直接浸潤で傷害するのか,あるいはPARの修飾を介するのかを明らかにすることを目的とした.[方法]8週齢Wistar ratの前脳虚血(両側総頚動脈遮断(8分間)+低血圧(平均動脈圧45mmHg))モデルを用いた.虚血8分前にPAR-1アゴニスト1mg (PAR-1群),もしくはPAR-2アゴニスト1mg (PAR-2群)を投与し,再灌流直後に10mg/kg ONOを投与した.また,虚血のみ(I群)と虚血後にONOを投与した(ONO群)を加え,再灌流7日の生存神経細胞数比を計測した.[結果]海馬CA1生存神経細胞数比はPAR-1, PAR-2, ONOおよびI群でそれぞれ40%, 10%, 65%と3.5%でONO群と比べPAR-2群で有意に低かった.[考察]虚血後に活性化するNEの細胞外マトリックス傷害の機序は,直接浸潤よりむしろPAR-2を介する可能性が示唆された.PAR2活性を虚血前もしくは再灌流早期にいかに抑制することが今後の検討課題である.
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Research Products
(2 results)