2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜マイクロドメインを用いた揮発性麻酔薬の作用機序の解明
Project/Area Number |
20791078
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
小野 純一郎 Kagawa University, 医学部・附属病院, 助教 (90363217)
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Keywords | 麻酔学 / 脂質 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
全身麻酔下における脳内マイクロドメイン分析に際して、一連の研究過程を「生化学的分析」と「細胞生物学的分析」に二分した。生化学的分析は脳細胞をホモジナイズし、ショ糖密度勾配遠心法によってマイクロドメインを分離精製して分析を行なう。この方法は手技的にも簡便で、マイクロドメイン内の脂質やタンパク質の定量・定性的分析に適している。しかし、細胞膜構造が壊れるため、細胞膜上のマイクロドメイン分布や細胞膜表面だけに発現しているマイクロドメインの定量・定性分析には不向きである。そこで細胞生物学的分析を行なう意義がある。細胞生物学的分析は、培養した中枢神経生細胞を利用し、マイクロドメインに多く含まれるスフィンゴミエリンをライセニンという物質で特異的に標識することで細胞膜上のマイクロドメイン分布を調べることが可能である。研究初年度の平成20年度は生化学的分析に着手した。対照群・吸入麻酔薬群・静脈麻酔薬群の三群に分けたマウスの脳からマイクロドメインを抽出する系を確立し、コレステロール定量とGABA_A受容体タンパク質の解析を行った。その結果、コレステロール量については三群間で有意差は見出せなかった。一方、吸入麻酔薬と静脈麻酔薬ではマイクロドメインに含まれる受容体タンパク量に差があることが分かった。マイクロドメインはシグナル伝達の首座であり、この結果は吸入麻酔薬と静脈麻酔薬の作用機序の差異を示唆するものである。これまでの研究は、両薬物共に受容体タンパク機能を修飾すると報告しているが、あくまで受容体タンパクレベルの話であり、マイクロドメインレベルでの証明はなされていない。マイクロドメインは脂質とタンパク質の複合体であり、お互いの機能相関によりシグナル伝達機能が決定される。このため、受容体タンパク分析に加えてマイクロドメイン内の脂質にも注目すべきであり、現在は脂質分析にも着手したところである。
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