2008 Fiscal Year Annual Research Report
下行性痛覚抑制経路におけるD体アミノ酸の作用に関する研究
Project/Area Number |
20791095
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松田 光正 Tokai University, 医学部, 助教 (10384918)
|
Keywords | Dセリン / セリンラセマーゼ / ホルマリン法 / 鎮痛 / 下行性疼痛抑制経路 / NMDA受容体 |
Research Abstract |
D体アミノ酸が哺乳類において重要な生理作用を有することが認められたのは最近のことである。すなわち、哺乳類脳内に遊離型Dセリンが大量に存在すること、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体グリシン結合部位の内因性リガンドであることが明らかとなってきた。下行性疼痛抑制経路における大縫線核のグルタミン酸受容体を介してセロトニン系を亢進して鎮痛効果を発現することが知られているが、グルタミン酸受容体に作用する内因性リガンドは明らかにされていない。下行性疼痛抑制経路おけるDセリンの作用を明らかにする目的として、疼痛モデルラット(ホルマリン法)を用いてDセリンの鎮痛効果について検討した。その結果、ラット脳室内にDセリンを投与した結果急性痛(ホルマリンによる刺激)と炎症性疼痛(ホルマリン投与後10分目以降に現れる)のいずれの疼痛に対しても有意に鎮痛効果を現した。また、Dセリンによる鎮痛作用は用量依存的であり、NMDA受容体グリシン結合部位拮抗薬(L-701, 324)およびオピオイド受容体拮抗薬(ナロキソン)によって拮抗された。すなわち、Dセリン脳室内投与は急性痛のみならず、炎症性疼痛に対しても鎮痛効果を有することが明らかとなった。また、Dセリンの鎮痛効果はオピオイド受容体と連関していることが示唆された。本研究により下行性疼痛抑制経路におけるDセリンの作用が解明され、Dセリンに注目した新たな鎮痛薬が見いだされる可能性がある。
|
Research Products
(2 results)