2010 Fiscal Year Annual Research Report
卵およびES細胞質を用いたがん細胞の初期化・再分化療法の確立に向けての基礎的検討
Project/Area Number |
20791140
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
深澤 宏子 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 助教 (60362068)
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Keywords | 癌 / 体細胞核移植 / クローン胚 / ES細胞 / ntES細胞 |
Research Abstract |
体細胞クローン動物の作出の成功という実験事実から、卵細胞質内には分化終了細胞を未分化な状態にする初期化因子(reprogramming factor ; RF)および、再び種々の方向に分化させる分化因子(differentiation factor ; DF)が存在することは確実である。本研究の最終目的は、これらの因子を用いてがんの新たな治療法を開発することである。しかしながら、卵細胞質は十分な量を確保することが難しく、これまで卵細胞質を研究材料として研究をすることが困難であった。そこで、本研究では、卵細胞質を研究材料として用いるために、卵細胞質の凍結保存が可能であるかを検討する目的で、まず、一度に大量にvitrification法を用いて凍結したマウス凍結除核卵細胞に体細胞核移植を行った。その結果、非凍結卵細胞質への体細胞核移植の胚盤胞到達率46.8%に対して凍結所核卵細胞への体細胞核移植卵は15.7%、生仔獲得率は4%に対して0.4%と有意に低かった。この凍結後の発生率の低下の原因を詳細に検討することは、より良い凍結保存法の開発に結びつくと考えられ、さらには卵細胞質内の初期化因子の特性の解析や将来的にその分離同定に繋がると確信する。また、種々のがん細胞において、ntES細胞を得ることを目的として、本年度はマウスの結腸癌細胞株であるcolon 26をドナー細胞として核移植を行ったところ、低率ながら胚盤胞まで到達した。よってこの事実からも卵細胞質にはがん細胞さえ初期化しうるPFやDFが存在することが明らかとなった。
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