2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20791143
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
味村 和哉 Osaka University, 医学系研究科, 助教 (50437422)
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Keywords | 未熟脳 / 新生児低酸素性虚血性脳症 / プレコンディショニング / グルタミン酸 / GLT1 / β-ラクタム抗生剤 / Ceftriaxone |
Research Abstract |
新生児脳障害の増悪因子としてグルタミン酸の興奮毒性は障害発生の初期に働く。そこで、β-ラクタム抗生剤によるプレコンディショニングでGLT1(グルタミントランスポーター1)を増加させグルタミン酸を減少させることで、脳保護の効果があるという仮説を検証した。当該年度は、まずβ-ラクタム抗生剤が未熟脳のGLT1の発現に与える影響と虚血低酸素耐性に与える影響を検討した。モデルはヒト正期産児の脳と成熟度が一致するとされている、生後7日のラット新生仔を用いた。5日間ラットの腹腔内にセフトリアキソン200mg/kg/dayを投与したのち、生後7日目において新生仔の脳を摘出した後、摘出脳をホモジナイズおよび遠心分離した後、western blottingによりGLT1蛋白の同定を行ったところ、セフトリアキソン投与群においてGLT1蛋白の増加を認めた。次に前述のプレコンディショニングを行ったラットを用いて、現在一般的に利用されているラット新生仔低酸素虚血性脳症モデルを作成した。すべての新生仔ラットをハロセン麻酔下に左総頚動脈を結紮したのち、8%酸素(8%O_2 in N_2)の低酸素に1時間暴露した。低酸素虚血暴露後7日目に新生仔の脳を摘出した後、固定包埋の上切片を作成し、MAP2の免疫組織染色を行い、脳梗塞量を定量化したところ、セフトリアキソン投与群において梗塞量の減少を認めた。現在のところ、Ceftriaxoneの投与はGLT1の未熟脳における発現を増加させ、虚血低酸素耐性を上げるという興味深いデータが得られており、その程度とメカニズムについて検討中である。今後は長期的な神経機能の予後について検討を加える予定である。このデータは新生児の周産期の脳障害に対して新たな予防処置(β-ラクタム抗生剤の予防投与)の可能性を検討するものである。
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