2010 Fiscal Year Annual Research Report
精子受精能獲得におけるリン酸化・脱リン酸化メカニズムの解明
Project/Area Number |
20791159
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 達也 自治医科大学, 医学部, 講師 (90348003)
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Keywords | 精子 / 超活性化 / リン酸化 / プロテインフォスファターゼ |
Research Abstract |
男性不妊症に対する治療法を開発するためには、精子の運動性・受精能力を獲得するメカニズムを明らかにする必要がある。これまで、精子の運動性・受精能力の獲得はCa^<2+>やAMP、PKAによるタンパク質リン酸化によって調節されることが示されている。今回ハムスターを用い精子の受精能獲得に関与するリン酸化タンパク質・それに関与するフォスファターゼを検索した。 (1)抗PPP1CA, 1CB, 1CC, 2, 3抗体を用いたWestern blotにより精子タンパク質中にPPP1CA, 1CC, 2, 3の存在を確認した。(2)PPP阻害剤(PPP1/2阻害剤:Okadaic acid, Calyculin A, Tautomycin, PPP3阻害剤:Deltamethrin, Fenvalerate)添加ハムスター精子の超活性化を観察し、精子超活性化はPPP1/2阻害剤添加により早期に誘起されたが、PPP3阻害剤添加では不変であった。(3)Western blotでのPPP1CA,2のリン酸化・脱リン酸化を見ることにより精子タンパク質中のPPP1CA,2活性を解析し、PPP1CA活性は精子活性化3~4時間から発現し、PPP2活性は精子活性化直後から発現し、0.5時間以後活性が低下することを確認した。PPP1CC活性は評価できなかった。(4)精子タンパク質のチロシンリン酸化の変化をWestern blotにより検出し、PPP1/2阻害剤添加精子での変化と比較した。するとPPP1の阻害によりAKAPの候補と考えられるタンパク質チロシンリン酸化は増強したが、PPP2の阻害ではコントロールと不変であった。 以上の結果により、PPP2は精子超活性化の調節に関与した。また、PPP2の作用部位は今まで報告されている精子受精能獲得を調節するリン酸化カスケードとは異なる可能性が示唆された。精子受精能獲得の調節メカニズムは未だその一部しか明らかになっておらず、本研究の知見がその解明の糸口となると考える。また将来的には男性不妊症の治療法の確立に寄与できるよう、研究を進めていきたい。
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