2008 Fiscal Year Annual Research Report
p19INK4dに対するsiRNAを用いた細胞周期再活性化による有毛細胞の再生
Project/Area Number |
20791203
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
春野 尊 Kumamoto University, 医学部・附属病院, 医員 (30464423)
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Keywords | 再生医学 / 内耳 |
Research Abstract |
蝸牛有毛細胞は、機械-電気的信号の変換装置として聴覚において極めて大事な機能を担っており、その傷害は多くの難聴の原因である。また、この有毛細胞は一旦傷害を受けると哺乳類においては再生することはなく、結果として永続的な感音性難聴を引き起こすことになる。有毛細胞の再生を妨げている原因としては、成熟後の哺乳類蝸牛有毛細胞が分裂能を失ってしまうことが最も大きな原因と考えられている。従来まで有毛細胞の分裂増殖の分子機構は不明であったが、最近p191NK4dのノックアウトマウスが生後も有毛細胞の分裂能を持ちつづけることが報告されており、p191NK4dが有毛細胞の分裂能において極めて重要な役割を担っていることが明らかとなった。すなわち生後哺乳類の有毛細胞のp191NK4dをダウンレギュレートすることにより有毛細胞の細胞周期を再活性化することができると考えられる。これは内耳再生の観点から極めて魅力的な方法であると考えられるがこれまで試みられてはいない。 一方、RNA干渉作用(RNAi)とは、ある遺伝子と相同な、センスRNAとアンチセンスRNAからなる二本鎖RNAが、その遺伝子の転写産物(mRNA)の相同部分を破壊するという現象で、哺乳類においてはRNAiの中間産物である2本鎖の短い2本鎖RNA(siRNA)を用いることで細胞毒性を示さずにRNAiを誘導できることが示されている。そこで本研究においては、生後の蝸牛有毛細胞の細胞周期を制御しているp191NK4dをターゲットとするsiRNAを発現するベクターを作成し、p191NK4dのダウンレギュレートにより有毛細胞の再生が可能かどうかを器官培養したコルチ器を用い検討を行う。 本年度、ターゲット遺伝子にたいする5種類のsiRNAを作製し、培養を用いてノックダウン効果を検討した。現在この結果を基にして、当初の計画であるアデノ随伴ウイルスベクターに加え、より簡便な導入方法としてエレクトロポレーション法による有毛細胞への導入を試みている。
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