2010 Fiscal Year Annual Research Report
インスリンは嗅覚において神経保護因子として働くのか:嗅覚障害の病態解明に向けて
Project/Area Number |
20791205
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
佐藤 伸矢 宮崎大学, 医学部, 助教 (50468047)
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Keywords | 神経科学 / 生体分子 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
脊椎動物の鼻腔には嗅覚受容器が存在し、この嗅覚受容器内の嗅レセプターニューロンは、その軸索を脳の嗅球に投射して、匂い情報を脳へ伝達している。この嗅レセプターニューロンの寿命は約30日と短命であり、そのため嗅覚受容器では、幹細胞が常に新生ニューロンを産生し続けている。そのため、多数の嗅レセプターニューロンが障害を受け死滅した場合でも、幹細胞からの再生がなされて嗅覚障害は改善される。このニューロンの新生や再生には、多くの神経栄養因子が関わっていると考えられているが、詳細はほとんど解明されていない。一方、脳・神経系において、(1)インスリン受容体の細胞内シグナリングが、細胞生存・細胞死のシグナル伝達系を統合しており、紳経回路網の形成・維持・修復を調節し、学習・記憶を促進すること、(2)インスリン受容体とその細胞内シグナル伝達分子の発現量や機能の異常が、加齢、痴呆、神経変性疾患(アルツハイマー病など)の病態に関与していること、(3)インスリン投与により、アルツハイマー病患者の学習・記憶能力は回復し、アルツハイマー病の病因であるβ-アミロイドの産生とタウの過剰リン酸化は阻止されることなどが、明らかにされつつある。今回、嗅レセブターニューロンの新生や再生に神経栄養因子としてインスリン受容体シグナリングが関わっていると想定し、研究を進めている。本年度は、嗅裂の位置を確認するために連続切片を作成し、位置確認作業を行った後、免疫染色法を用いて嗅粘膜上皮にインスリン受容体が発現していることを確認した。
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