2008 Fiscal Year Annual Research Report
中耳・副鼻腔における炎症の遷延化と粘膜修復機構に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20791212
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
中村 善久 Nagoya City University, 大学院・医学研究科, 助教 (90360023)
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Keywords | 杯細胞化生 / Math1 / TNF・α / レチノイン酸 |
Research Abstract |
申請者は20ng/mlTNF-αと1μMレチノイン酸の両者を隔日投与しながら中耳粘膜細胞を2週間培養することによって多数の杯細胞を誘導するモデルを確立している。さらにこの系でMath1を遺伝子導入すると、さらに多くの杯細胞を誘導することができる。TNF-αは炎症性サイトカインであるので、これは杯細胞化生のモデルになると考えている。また、Math1は杯細胞発生時に杯細胞への分化を決定する転写因子であるが、炎症による杯細胞化生においても中心的な役割を果たしていると思われる。このモデルを使用し、DNAマイクロアレイを行って、杯細胞化生に特徴的なムチンの発現やシグナル伝達経路を解析した。その結果、Math1の遺伝子導入により、MUC2、5ACの発現が上昇した。TNF-αやレチノイン酸投与により、これらのムチン遺伝子の発現がさらに上昇することはなかった。Math1がこれらのムチン発現において重要な役割を果たしていると思われる。我々はHT29(ヒト大腸癌細胞株)にMath1遺伝子導入してムチン発現に関する検討を行い、MUC2, MUC5ACの発現を確認している(differentiation投稿中)。 また、AKT3の発現はMath1の遺伝子導入やTNF-α、レチノイン酸の単独投与でで軽度上昇し、Math1, TNF-α、レチノイン酸を同時に作用させると飛躍的に上昇した。また、AKTの上流に位置するPI-3Kの発現に関しても同様の結果が得られた。さらに、杯細胞分化の指標となるTFF3の発現においても同様の結果が得られた。従って、杯細胞化生にはPI-3K/AKT経路が重要な役割をはたしており、おそらく、この経路はTFF3の発現を制御していると考える。
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