2008 Fiscal Year Annual Research Report
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20791293
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
羽藤 晋 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 独立行政法人国立病院機構東京医療センター(臨床研究センター)視覚研究部, 研究員 (70327542)
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Keywords | 細胞・組織 / 生理学 / 薬剤反応性 / 薬理学 / 移植・再生医療 |
Research Abstract |
角膜内皮は角膜の最後面に位置する一層の細胞層であり,ポンプ機能とバリア機能により角膜実質の含水率を制御し,角膜の透明性の維持に寄与している。角膜内皮細胞はヒトでは生後は再生能力がなく,細胞数の減少がある段階に達すると内皮機能不全となり,角膜浮腫,水疱性角膜症により視力低下を来す。平成20年度の段階で、Ussing chamberを用いた角膜内皮ポンプ機能の測定とNa-K ATPase酵素活性の測定を行い、デキサメサゾン,およびPhorbol dibutyrateがマウス角膜内皮細胞のNa-K ATPase活性を上昇させる薬物として確認された。さらにその詳細な機序として、Western blotting法を用いて、デキサメサゾンによるNa-K ATPase活性化は、蛋白合成によるNa-K ATPaseの発現量増加を介していることが確認された。またPhorbol dibutyrateは、protein kinase C(PKC)を活性化し、さらにprotein phosphatase 1及び2Aの活性化を介して、Na-K ATPaseを脱リン酸化させることにより角膜内皮ポンプ機能を増加させる機序が確認できた。一方、PKCの下流には、cyclooxygenaseやcytochrome P_450といったNa-K ATPase活性を阻害する経路もあり、PKCによるNa-K ATPase活性化はbidirectionalなバランスの上になりたっていることが明らかとなった。 本研究の成果は,角膜移植手術によらない角膜内皮機能不全の治療法として、薬理学的に角膜内皮のNa-K ATPase活性を上昇させることにより、従来ほとんど考慮されてこなかった薬物療法の開発にっながることになる。薬物治療により,内皮機能不全のいくらかの症例が治療できるようになり,手術を回避できるとすればその医学的,社会的意義は大きいものと考えられる。眼球提供数が多く角膜移植を行うことが比較的容易である米国に比べ,本邦では提供眼が常に不足している状態であり,角膜移植手術によらない内皮機能不全の治療法の確立は特に本邦では意義が高いと考えられる。
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Research Products
(8 results)