Research Abstract |
高度侵襲手術の術後や多発外傷の管理において,経腸栄養の重要性が広く認識されている。特に早期経腸栄養は,感染症合併率を低下させ,外科術後の生存率を高めることが知られている。一方,EPA(エイコサペンタエン酸)およびGLA(γ-リノレン酸)を配合した経腸栄養剤の抗炎症効果が,敗血症病態で確認されている。敗血症病態におけるEPA/GLA配合経腸栄養剤の効果を,腸管のアポトーシスとの関連で評価することを目的とした。敗血症モデル動物として,盲腸結紮穿孔(CLP : cecal ligation and puncture)雄性マウスICRマウス(8-10週,体重20-25g)を用いた。24時間の絶食の後にCLP作成後,EPA/GLA投与群と非投与群に分けた。また,対象群は,腹膜切開と虫垂先端の膨出のみを施行したものとした。CLP48時間後の腸管(食道、胃,十二指腸,空腸,回腸、近位結腸、遠位結腸)のサンプリングを行い,腸管粘膜上のFas, TNF-R1, caspase3の発現を評価し,アポトーシスをTUNEL染色で評価した。敗血症群では,空腸を中心とした腸管にFas, TNF-R1, caspase3の発現が高まることが確認された。一方,敗血症病態にEPA/GLAを投与することにより,空腸のFas, TNF-R1, caspase3の発現が抑制された。TUNEL染色では,敗血症で進行する空腸のアポトーシスをEPA/GLA配合経腸栄養剤が抑制することが確認された。敗血症病態の栄養管理において,EPA/GLA配合経腸栄養剤は腸管粘膜におけるFas, TNF-R1, caspase3の発現を減少させ,外因性アポトーシスシグナルを抑制する可能性がある。
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