2008 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素によるインターフェロン・ガンマー誘導性遺伝子の転写抑制機構の解析
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20791360
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
廣井 美紀 Meikai University, 歯学部, 助教 (30419717)
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Keywords | ケモカイン / 低酸素 / インターフェロン / 転写 |
Research Abstract |
インターフェロン・ガンマー(IFNγ)は、抗腫瘍作用を持つサイトカインであり、腫瘍細胞に直接作用し細胞増殖を抑制するだけでなく、腫瘍免疫の活性化を介した間接的な作用も有する。この腫瘍局所へのヘルパー1型T細胞の動員は主にIFNγにより誘導されるケモカインCXCL9およびCXCLIOが関与している。一方、腫瘍細胞が組織内で増殖・浸潤するためには血液からの酸素および栄養供給が必要である。しかし腫瘍が一定の大きさ以上になると、周囲の血管からの酸素供給が抑制され、腫瘍細胞は低酸素状態になることが知られている。我々はこれまでに(1)口腔扁平上皮癌細胞における低酸素状態がIFNγ誘導性遺伝子CXCL9およびCXCL10の発現を抑制すること、(2)この遺伝子発現の抑制がIFNγにより活性化される転写因子STAT1のシグナル伝達を抑制せず、コアクチベーターやRNAポリメラーゼエIIを含むエンハンソームの形成抑制によるものであることを明らかにした。STAT1依存的転写活性はSTAT1二量体形成および核内移行に関与するSTATITyr701のリン酸化だけでなく、STAT正Ser727のリン酸化も関与していることが報告されている。そこで本年度は、低酸素によるエンハンソーム形成抑制にSTATISer727のリン酸化の抑制が関与しているか否かについて検討した。 まずSTATISer727が低酸素により抑制されているか否かを検討するために、抗STATISer727リン酸化抗体を用いてウェスタンブロットを行った。その結果、HSC-2細胞では低酸素によるSTATISer727リン酸化の抑制が認められた。しかしながら、低酸素によるIFNγ誘導性遺伝子の発現抑制の認められる他の癌細胞株(HSC-3およびT98G)では、低酸素によるSTATISer727リン酸化が認められなかった。この結果は、STATISer727リン酸化は低酸素によるIFNγ誘導性遺伝子発現抑制に細胞特異的に影響している可能性が考えられた。次にSTAT1野生型およびSTATlSer727Glu変異体を有するウィルスベクターを作製し、STATI欠損株U3A細胞に感染させ、リアルタイムPCR法により低酸素によるIFNγ誘導性遺伝子発現抑制が解除されるか否かについて検討を行った。その結果、Ser727変異体を過剰発現させた細胞でも、低酸素によりIFNγ誘導性遺伝子発現の抑制が認められた。これらの結果から、STATlSer727は低酸素によるCXCL9およびCXCL10の発現抑制に関与していない可能性が示唆された。
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