2009 Fiscal Year Annual Research Report
赤色光レーザーダイオードを高度利用した低濃度過酸化水素による歯の漂白法の開発
Project/Area Number |
20791417
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
猪飼 紘代 Tohoku University, 大学院・歯学研究科, 助教 (20431588)
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Keywords | 高性能レーザー / 低濃度過酸化水素 / パルス / 活性酸素 / フリーラジカル |
Research Abstract |
歯の漂白は、過酸化水素から発生するフリーラジカルが色素分子中の不飽和二重結合を切断、あるいは吸着したポリフェノールの重合を切断することにより起こると考えられている。現在用いられている高濃度過酸化水素には、正常組織の脂質酸化やタンパク変性を惹起し、組織を破壊するといった副作用があるため、歯肉や粘膜の炎症・知覚過敏を引き起こすという問題点がある。そこでわれわれは、できるだけ低濃度の過酸化水素を用い、その活性を促進するための光照射を行い、より副作用の少ない安全な歯の漂白法の開発を行うことを目的とした。 最終濃度1Mの過酸化水素を、805nmパルスレーザーで光分解し発生するヒドロキシルラジカル量は、紫外光に近い可視光である405nmCWレーザーを用いた場合と比較し約6分の1程度であったが、赤色レーザーからこれほどのヒドロキシルラジカルが発生するのは、初めての知見である。808nmCWレーザー照射ではほとんど発生していないこと考えても、組織のより深部に働きかけることが可能な赤色レーザーをパルス化することにより、多くのヒドロキシルラジカルを発生したことは、歯の漂白を行うにあたり、非常に意義深いものであると考えられる。 さらに、メラニン色素水溶液を用いたレーザー透過光強度の測定を行い、漂白効果を確認した結果、過酸化水素最終濃度1Mの条件下において、レーザー照射ありの方が、また、照射時間が長い方が高い漂白効果が得られることが客観的に示された。この実験系で生成したフリーラジカルはヒドロキシルラジカルであるため、少なくとも漂白にヒドロキシルラジカルが関与していることが初めて示された。また、ヒドロキシルラジカル発生量が少なくても、時間をかければ高い漂白効果が得られることも示されたため、805nmパルスレーザーを用いて行う歯の漂白法は、生体に安全で高い漂白効果が得られる方法となる可能性を秘めている。
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