Research Abstract |
発音機能は, ヒトがコミュニケーションを行う上で重要な口腔機能であり, 欠損補綴処置により回復を図ることができる. しかし不適切な形態の補綴装置の装着で発音機能障害を引き起こすこともある. そこで, 簡便な録音機器とノートパソコンにて発音時の音声パターンを符号に変換し, ラベル表示する音声認識システムを導入してチェアサイドで補綴処置の効果を判定可能な評価システムを開発し, これまでに上顎義歯の前歯部被蓋やS状隆起の形態を変えた際の[シ]音の発音の違いを評価し, 発音機能に有利な設計について検討を行った。しかし, これまでの研究では、どの程度の認識率に到達すれば, 発音機能が十分回復されたと評価してよいかの明確な基準がないのが現状である. 今年度では, 発音障害の生じやすい複数の音節を健常歯列者で分析し, 義歯装着者と比較して発音機能評価の被験音、被験語が適切か, 健常歯列者の数値を評価基準として使用できるかについて検討した. 被験語は義歯装着時に発音の影響を受けやすい摩擦音, 破擦音, 破裂音で, 後続母音が舌位の高い[イ]となる[シ], [チ], [キ]音を含む"石川[i/Shi/kawa]","イチロー[i/chi/ro]","沖縄[o/ki/nawa]"を選択し[シ], [チ], [キ]の子音部を分析した." その結果, [チ]については被験語の選定等再検討を要するが, [シ], [キ]については本システムにて健常歯列者データを基準値に設定し, 義歯装着者の発音機能を評価することの有用性が示唆された. 今後は引き続き, 健常歯列者の測定, 分析に加えて, 義歯装着者にて評価を行い, 義歯の形態の違いが発音機能に与える影響を明らかにする.
|