Research Abstract |
平成22年度においては,研究実施計画に従い咀嚼能力と側方ガイダンスとの関連について検討した. [研究の背景・目的]上下歯列の咬合面形態およびその接触関係によって誘導される側方滑走運動は,臨床において歯科医によって調整または変更される場合があり,また咀嚼運動と密接に関連することから,客観的咀嚼能力との関連について興味がもたれてきたが,これまでに報告されていない.そこで本研究では,健常有歯顎者における側方ガイダンスと客観的咀嚼能力の関連を明らかにすることを目的とした. [方法]被験者は,研究への同意が得られた健常有歯顎者55名とした.側方ガイダンスは,ナソヘキサグラフ(小野測器)を用いて算出した.客観的咀嚼能力は,混合能力試験および粉砕能力試験によって評価した.最大咬合力は,オクルーザルフォースメーター(長野計器)を用いて計測した.統計解析には,混合能力試験または粉砕能力試験で得られた値を従属変数,性別,側方ガイダンス,最大咬合力を独立変数とした重回帰分析をそれぞれ行った.有意水準は0.05とした. [結果・総括]本研究の結果から,健常有歯顎者において,咀嚼混合能力および咀嚼粉砕能力と側方ガイダンスの間の関連について,弱い関連が示唆されたが,統計学的有意レベルには達しなかった(P>0.05).一方,咀嚼混合能力および咀嚼粉砕能力と最大咬合力の間にはそれぞれ関連があることが示され,これまでの研究結果と一致することが確認された.以上から,側方ガイダンスは,健常有歯顎者の客観的咀嚼能力に関与する因子としてこれまでに明らかになっている咀嚼運動パラメータや最大咬合力と比較して,関与する程度が低いことが示唆された.
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