2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20791443
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山本 史朗 日本大学, 松戸歯学部, 助手(専任扱) (50419793)
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Keywords | 歯科 / 総義歯 / 長期軟性裏装材(軟質リライン材) / 動的難弾性 / 劣化 |
Research Abstract |
被験者により軟質リライン材の劣化の状態が異なることを経験し,被験者の個体因子や義歯使用時の環境因子が劣化と関係すると仮説を立てた。さらに異なる軟質リライン材が咀嚼機能に及ぼす影響について,シリコーン系およびアクリル系軟質リライン材が,通法のアクリルレジンと比較し咀嚼機能の改善に寄与するか否かを臨床疫学的に検討し,さらに床下疑似粘膜における圧力動態を材料学的に明らかにし,臨床的知見と材料学的知見との関連を検討することを目的とした。 そこで,シリコーン系軟質リラインを下顎総義歯床粘膜面に用いた(SR)場合,通法のアクリルレジンを下顎総義歯に用いた(AR)場合より咀嚼機能を有意に改善するか否かを検討する目的で無歯顎患者を対象に無作為割付臨床試験を行った結果,SRはARに比べ咀嚼機能の改善に有用であることが明らかとなった。また,この咀嚼機能の改善は咀嚼サイクル初期における咬合相時間の延長に依存することが示唆された。 続いて,アクリル系軟質リラインを下顎総義歯床粘膜面に用いた(ARL)場合,通法のアクリルレジンを用いた下顎総義歯(CAR)よりも,患者の咀嚼機能を改善するか否かを検討することを目的とし無作為割付臨床試験を行った結果,ARLはCARに比べ咀嚼機能の改善を認めなかった。 さらに,異なる軟質リライン材の床下疑似粘膜下に生じる圧力動態の違いを検討することを目的に,床下疑似粘膜下への衝撃荷重モデル実験を行い,シリコーン系軟質リライン材は,アクリル系軟質リライン材およびアクリルレジンと比較した結果,1.最大圧力の有意な減少2.最大圧力到達時間の有意な延長3.圧力伝導速度の有意な遅延を示し,シリコーン系軟質リライン材は床下疑似粘膜下の圧力伝導速度の遅延を示し,これが咬合相時間の延長に寄与し,臨床的に咀嚼機能の向上へ関与することが示唆された。
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