2009 Fiscal Year Annual Research Report
羊膜と口腔上皮細胞による培養上皮シートの開発に関する実験的研究
Project/Area Number |
20791462
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小池 剛史 Shinshu University, 医学部附属病院, 助教 (60359734)
|
Keywords | 移植・再生医療 / 再生医学 / 歯学 |
Research Abstract |
本研究は、羊膜と口腔上皮細胞を組み合わせることにより、培地に含まれる動物性蛋白や未知因子を完全に排除した環境でも、上皮細胞を重層化させる事に成功した。この培養法は世界初の試みといえる。また従来医療廃棄物とされてきた羊膜をscaffoldとして使用する事により、倫理的な問題が生じにくい事も利点である。 実験の手順は、1, 抜去歯から口腔上皮細胞を単離。2, 口腔上皮細胞を継代培養。3, ヒト乾燥羊膜上に培養口腔上皮細胞を播種し、数日間液相下培養。4, 無血清培地のカルシウム濃度を上げ、約3週間気相下培養。5, 組織標本による形態学的・免疫組織学的検討を行った。 口腔上皮細胞は、ヒト乾燥羊膜上で気相下培養を行っても増殖を続け、培養上皮シートのH-E染色による形態学的検討では、口腔上皮細胞がヒト乾燥羊膜でほぼ均一な約10層以上からなる重層化を認めた。また重層化に伴う核の消失はなく、すべての層で活性のある細胞がみられた。免疫組織学的検討では、cytokeratin 10/13、laminin-5において、正常な口腔上皮と類似の発現パターンを示した。さらに、上皮stem-rcellや上皮の活発な増殖能を示すマーカーであるkeratin-19やPCNAでは、正常な口腔上皮と比べ、培養上皮の全層で陽性細胞の発現が認められた。また、発癌と関連のあるP53タンパクの発現は認めなかった。 本実験結果より、ヒト乾燥羊膜と口腔上皮細胞による複合培養重層上皮シートは、正常口腔粘膜上皮と比べ、より高い細胞活性と増殖能があることがわかった。ヒト乾燥羊膜は、口腔粘膜上皮細胞培養における細胞外マトリックスとして、有用かつ妥当な組織であると思われた。本複合培養重層上皮シートは、ヒューマンセルによる培養上皮シート開発における有望な供給源となり得る事が示唆された。
|