2009 Fiscal Year Annual Research Report
腺様嚢胞癌の浸潤機構におけるMMPsおよび増殖因子の関与
Project/Area Number |
20791561
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Research Institution | Hyogo College of Medicine |
Principal Investigator |
田中 徳昭 Hyogo College of Medicine, 医学部, 助教 (70412012)
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Keywords | 腺様嚢胞癌 / 3次元培養 / 浸潤機構 / MMPs / 増殖因子 |
Research Abstract |
腺様嚢胞癌は悪性唾液腺腫瘍であり口腔領域の悪性腫瘍としては扁平上皮癌に次いで発生頻度が高い疾患である.口腔領域では比較的遭遇することが多く、また特徴的な病態を示す疾患である腺様嚢胞癌であるが、いまだに不明な点が多い. われわれはACCNSの他に3次元培養でも同様の振る舞いをみせる、ACCMおよびACCSの3種類の細胞株を研究に用いることとした.MMPsについては昨年度までの研究で、腺様嚢胞の浸潤機構にはMMP2が関与していないことが考えられ、腺様嚢胞癌の浸潤機構にはMMP9およびMMP14を中心としたシステムが深く関与していることが考えられた. また、腺様嚢胞癌は神経・脈管へ顕著な浸潤を認め、またリンパ行性ではなく血行性転移が多いことが知られている.このことから腺様嚢胞癌は神経・血管形成に関与する因子に誘導されるように浸潤することが考えられたため、血管形成もしくは神経形成に関与する増殖因子について検索した.ACCSおよびACCMでは強力な血管増殖因子であるVEGFの発現を認めたが、ACCNSでは認めなかった.VEGFのレセプターであるKDRについては発現を認めず、ACC細胞が産生するVEGFはオートクラインとして働くのではなく、パラクラインとして働いている可能性が示唆され、ACCが産生するVEGFにより周囲に血管新生が誘導され、それによりACCの脈管浸潤や血行性転移が惹起されやすい環境にあることが考えられた.また、VEGFのもう一つのレセプターであるニューロピリン1について検討したところ、ACC細胞で発現を認めた.しかし、ニューロピリン1は単独ではVEGFレセプターとはなり得ないため、もう一つのリガンドであるセマフォリンとの関与が考えられた.セマフォリンは神経のガイダンス因子でもあるため、このセマフォリン-ニューロピリンシステムが腺様嚢胞癌の神経浸潤機構に関与している可能性が考えられた.今後は、これらの因子の浸潤機構への関与を詳細に解明し、治療薬として利用できないか検討を行う予定である.
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