2010 Fiscal Year Annual Research Report
口腔内環境因子・多菌種間相互作用がもたらす口臭物質産生促進メカニズムの解明
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20791632
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鷲尾 純平 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (20400260)
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Keywords | 口臭 / 口腔細菌 / システイン / 代謝 / 硫化水素 / メタボローム |
Research Abstract |
昨年度までに、既存のキャピラリー電気泳動装置と飛行時間測定型質量分析計を組み合わせた装置(CE-TOFMS)を用いた口腔内細菌の代謝中間体および代謝産物の定量分析(メタボローム解析)方法の確立を行ってきたが、今年度は特に、システインの代謝機構を推定するための代謝中間体および代謝産物の定量分析方法についてさらなる確立を試み、その手法を用いてVeillonella属によるシステイン代謝機構の解明を行った。 実験には3種のVeillonella属を用い、各菌の粗酵素抽出液を用いてシステインを分解させたときの代謝中間体・代謝産物を検出・定量し、その変化を詳細に検討することで、各細菌の硫化物産生酵素の特定や、活性測定を試みた。その結果、これまで測定してきた硫化物及びアンモニアの測定結果からだけではわからなかったシステイン代謝機構が、CE-TOFMSを用いた代謝中間体および代謝産物の定量解析結果を加えることで、より詳細に検討できる可能性が示された。まず、菌種により酵素活性は大きく異なり、また検出される物質にも違いがみられた。また、既知の酵素阻害剤などを添加し、検出される代謝産物の違いを比較することで、関連代謝酵素の特定も試みたが、こちらも菌種によりその影響が様々であり、システイン代謝機構は菌種(speciesレベル)の違いにより、関連代謝酵素の種類や性質が少しずつ異なる可能性が示唆された。また、同一菌種でも条件によって活性や検出される代謝中間体の量などに違いがみられたことから、各種条件との関連性などについても、さらなる検討を重ねているところである。 今回確立した手法及び得られた結果は、代表的な口臭物質であり且つ歯周病にも関連する硫化物の産生機構の詳細を明らかにし、また阻害剤の開発(ターゲット物質の選定や抑制効果の検討)を行う上でも、非常に有用な手法・情報になると考えられ、今後の口臭予防や歯周病予防の研究にも寄与できる可能性が高いと考えられた。
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