2009 Fiscal Year Annual Research Report
肥満による歯周病悪化機序の解明:酸化ストレスの観点から
Project/Area Number |
20791642
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
友藤 孝明 Okayama University, 病院, 講師 (80335629)
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Keywords | 歯学 / 栄養学 / トランスレーショナルリサーチ |
Research Abstract |
本研究の目的は、肥満と歯周炎との関連性を酸化ストレスの観点から検討することである。前年度において、申請者は、肥満による血液の酸化ストレスの増加が、歯肉の酸化ストレスも高め、その結果として歯周組織の炎症が増悪することを明らかにした。本年度では、歯周炎による血液の酸化ストレスの増加が、肥満に伴う肝臓および白色脂肪の損傷にどのような影響を与えるのかを検証した。 5週齢のZucker fatty(ZF)ラット(遺伝性肥満ラット)12匹とそのヘテロ接合体であるZucker lean(ZL)ラット12匹をそれぞれ6匹ずつ2群に分けた。一方の群には、両側の下顎第一臼歯に絹糸を4週間巻いて実験的歯周炎を惹起させた。もう一方の群は、対照として処置を行わなかった。4週間の実験期間終了後、下顎第一臼歯周囲の歯周組織、肝臓および白色脂肪の組織標本を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色下で病理変化を評価した。また、肝臓と白色脂肪のmRNAを抽出し、炎症性サイトカイン(CRP、TNF-α、およびIL-6)の発現の大きさを、リアルタイムPCR法を用いて分析した。さらに、血液の酸化ストレスの指標として、血清に含まれるヘキサノイルリジン(HEL)濃度を、ELISA法を用いて測定した。 歯周炎を惹起させたすべてのラットにおいて、歯周組織における炎症性細胞浸潤と歯槽骨吸収が観察された。歯周炎の有無で比較した場合、ZLとZFラットの双方ともに、歯周病による血清HEL濃度の上昇と肝臓と白色脂肪における炎症性細胞の増加が認められた。また、歯周病は肥満による肝臓のCRPとTNF-αのmRNAの発現をさらに高めた。同様に、肥満に伴う白色脂肪のCRPとIL-6のmRNAの発現も、歯周病によって大きくなった。 歯周炎は血液の酸化ストレスを増加させると共に、肥満による肝臓と白色脂肪の炎症性反応をさらに大きくしていた。これらの結果は、歯周炎が血液の酸化ストレスを介して肥満による全身性の損傷を助長させている可能性を示唆している。
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