2009 Fiscal Year Annual Research Report
多数遺体に対する簡易的遺体衛生保全 -アロマオイルの効用-
Project/Area Number |
20791648
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
岩原 香織 The Nippon Dental University, 生命歯学部, 助教 (90434141)
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Keywords | 遺体衛生保全 / アロマオイル / 抗菌作用 / グリーフケア / 大事故・大災 / 多数遺体 |
Research Abstract |
個人識別(身元確認)は、歯科医師の役割として認識されており、事故や災害の規模や種類によって、遺体の個人識別が完了するまでに時間がかかる場合がある。本研究は、遺体が遺族の元にかえり、埋葬されるでの間、簡易に行える防腐や感染予防として、アロマオイルを用いた遺体衛生保全の可能性について検討したものである。また、アロマオイルの一般的な使用目的であるにおいに着目し、遺族等のグリーフケアへの応用についても検討した。 昨年度の研究結果より、細菌学的に効果を認めたEucalyptus、Lavender、Lemongrass、Peppermint、Pine、Tea Treeを使用し、臨床検体(皮膚、鼻腔、口腔のスワブ懸濁液)や真菌に対する抗菌力をディスク拡散法に準ずる方法にて検討した。菌株に対する抗菌力に比較し、臨床検体に対する抗菌力は低下した。また、真菌に対する抗菌力は、阻止円が認められなかったアロマオイルについても、Controlに比較し、細菌の発育抑制が認められた。細菌学的検査の結果、最も有効と考えられるアロマオイルは、Lemongrassであった。 効果的な使用方法の検討のため、直接作用(アロマオイルをしみ込ませたディスクを培地に直接置いたもの)と、拡散作用(ディスクをシャーレの蓋に置いたもの)の比較を行った。作用方法による影響はそれほど大きくはなかったが、Eucalyptus、Pineは検体に関わらず、直接作用より拡散作用による効果が大きいと考えられた。 この研究のもう一つの目的である、においによる心情的負担の緩和やグリーフケアへの応用について、におい官能試験にて検討した。使用目的から、適切なアロマオイルは、快・不快の個人差が少なく、評点0(快でも不快でもない)評価が多いものと考えた場合、Peppermintが最も適していると考えられた。 以上の研究結果より、アロマオイルを使用した簡易的遺体衛生保全の有用性が示唆され、大事故・大災害時だけでなく、死に関係する現場においても、遺族のみならず、遺体に接する方々の心情を考慮し、活用することが期待される。
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