Research Abstract |
皮膚の浸軟は褥瘡発生要因として注目されているが, 浸軟に伴う皮膚の組織学的変化について詳細に検討した報告は少ない. そこで本研究では, 皮膚の浸軟状態を実験的に作製し, その組織学的な基礎データを集積することを目的に研究を行った. 本研究では, ウサギを実験に供し, ウサギの両臀部を除毛後, 浸軟状態を作製した. 浸軟部位について, 毎日肉眼的観察および皮膚水分率の測定を行った. 浸軟状態作製4日目に浸軟部位の皮膚組織を摘出し, 常法に従い組織標本を作製後, ヘマトキシリン&エオジン染色を施し, 光学顕微鏡にて観察した.また, 栄養不良状態による組織学的変化の有無を確認するため, 栄養不良ウサギを同実験に供し, 同様の操作を行った. なお, 本実験は実験動物に関する指針に準拠し, 動物福祉の観点から適正に実施した. 各日の皮膚水分率測定では, 周囲健常皮膚の水分率に対し, 浸軟部位では約2倍の値を示した. 肉眼的観察においては, 浸軟部位に異常は認められなかった. 組織学的観察では, 表皮層が軽度肥厚し, また角質層が若干重層化している像がみられた. さらに真皮表層に炎症性細胞の浸潤が散見された. 栄養不良ウサギにおいては, 前述の所見に加え, 表皮細胞の傷害像も観察された, 本研究結果より, 皮膚の浸軟状態は, 肉眼的に判定できない場合でも, 組織学的には褥瘡を発生しやすい状況にあり, すでに皮膚傷害をきたしている可能性があることが示唆された. さらに栄養不良状態下では, その傷害が悪化する傾向にあることが明らかとなった.
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