Research Abstract |
看護(介護)従事者の腰痛経験率は8割前後と多く,大勢の看護師が腰痛に悩む現状がある.本研究の目的は,看護基礎教育で学ぶ看護技術や臨床現場で実施されている看護ケアの腰部への負荷を定量化し,より負担の少ない介助方法の検討,腰痛発症リスクの予測,腰痛予防および,その教育へ役立てることである.看護ケアによる腰痛の発症原因の多くは,患者などを抱えての"前屈","中腰","ひねり"動作である.これまでの腰部負荷に関する研究は,看護師の主観的な感覚と,"前屈","中腰"について,ビデオ撮影による体幹,下腿,膝,肘などの関節の角度を,二次元的に計測したものがほとんどであり,"ひねり"について,看護ケア時のひねり角度と腰部への負担の要因は明らかにされていない.そこで,看護ケアにおける腰部のひねり角度を三次元角度センサを用いて測定し,表面筋電図との関係を調べた.三次元角度センサを用いることにより,ひねり角度だけではなく,ひねり角速度,ひねり角加速度といったひねりの変化と表面筋電図の関係も示すことができる.結果,ひねり角度,ひねり角速度,ひねり角加速度と表面筋電図の間には正の相関があることを明らかにした.これらの結果を踏まえ,腰部への負担が大きいとされる車椅子移乗介助を異なる3方法で実施し,各方法の一連の動作を目的別に4動作に分け,各動作中の"ひねり"が腰部に与える影響に関して,介助方法による腰部への負荷量の違いを視覚的に明示する方法を検討した.また,ひねりによる腰部負荷は左右アンバランスな筋活動の持続により増強するといわれていることから,この視覚化の方法を用いて,介助方法による違いと介助時の状況などにより生じる腰部負荷の左右差を示し,移乗介助における,より腰部負荷の少ない条件や注意点を明確にした.今後は実用化に向けた研究を進めたい.
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