Research Abstract |
本研究の目的は,父親の育児行動の習熟について明らかにするものであり,次の3点について検討することであった。(1)父親は育児行動を習熟させるのか。(2)父親の育児行動の習熟に父親のわが子への愛着は影響するのか。(3)父親と母親の育児行動の習熟プロセスに違いがあるのか。 対象者は平成20年8月から平成21年3月に第1子を出産予定の夫婦60組である。調査時期は,妊娠後期,生後1ヵ月,生後2ヵ月,生後4ヵ月の4時点であり,平成22年6月に全ての調査が終了した。 調査の内容は,妊娠期において育児や胎児・乳児についての知識,妊娠に対する態度・反応,夫婦関係など,生後1ヵ月では,初めてわが子と接触したときの反応,出産や育児に対する態度・反応などについて,生後2ヵ月と生後4ヵ月では,育児や子どもに対する態度・反応,夫婦関係などについてたずねた。さらに,普段(平日・休日)どの程度特定の育児行動を実施しているか平均回数をたずねた。生後2ヵ月と生後4ヵ月においては,家庭において父親と母親それぞれが,観察用の玩具を用いて子どもをあやしているところを3分間ビデオカメラで撮影した。 近年,父親の育児行動に焦点を当てた研究は増えつつあり,父親の子どもとの関わりが子どもの発達に影響を及ぼすことが明らかにされてきた。しかし,父親の育児行動の詳細は母親の主観に任せるものがほとんどであった。その中で父親は第2の養育者としての観点からその重要性が指摘されてきた。父親を対象とした研究においても,どの程度育児に参加しているか認識をたずねるもので,実証的な数値を示したものは見当たらない。本研究では,母親が普段行っている育児行動の中から主要な10項目について,父親が一日何回実施しているのか生後1ヵ月という極めて早期から4ヵ月までの変化を調べ,父親と母親の育児行動の違いについて詳細な検討を行った。結果の一部を平成22年3月に開催された発達心理学会で発表した。
|