2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20791794
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Research Institution | Kochi Women's University |
Principal Investigator |
冨川 順子 Kochi Women's University, 看護学部, 助教 (90433010)
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Keywords | 回復 / recovery / resilience / 回復力 / 統合失調症 / リジリエンス / レジリエンス |
Research Abstract |
統合失調症の診断後、2年以上安定して地域生活を送る、調査への同意を得た33名(関東、関西、四国在住)に、病から回復する経験についてライフストーリ法によるインタビュー調査を行った。 得られたデータを逐語録に起こし、統合失調症を持つ人のresilience(回復力)を構成するテーマを抽出し、同じ意味を持つと考えられるテーマのカテゴリー化を10名(平成20年度10名。計20名)について行った。また33名の対象者の回復の過程を表すカテゴリーについて検討を行った。 その結果、20名の対象者が回復の過程で自ら発揮した力として、信頼関係を結ぶ力、人から学ぶ力、経験から学習する力、自分の認知を変えて前向きに捉えていく力、過去の失敗を避けようとする力、つらいことを忘れていく力、無理しない程度に物事を継続する力が捉えられた。 統合失調症を持つ人の回復の過程では(1)幻覚や妄想に圧倒され、仕事やそれまでの生活を失って徹底的な敗北感や無力感を味わう段階、(2)無力感のなかで無気力に流されながらも日々できるわずかなことを行って日常生活を過ごす・人や薬に頼りながら人と自分への信頼を少しずつ取り戻す段階、(3)無力感と小さな希望のあいだで揺れ動きながら自分の生き方を模索していく段階、(4)無力感を残しながらも病の意味を整理し、自分らしく生きる段階がみられ、33名の対象者は(3)か(4)のどちらかの過程を生きていると考えられた。 統合失調症を持つ人のresilienceは、無力感とそこからさらに起こる精神症状や障がい、そのことによって感じる痛みや苦しみから逃れようがない中で、時間経過の中で人や薬の力も借りながら、その時々に自分ができる日常生活を続けることによって、自分が耐えられるものに形を変え続けようとする不断の努力ではないかということが今年度までの研究からは示唆された。
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