Research Abstract |
本研究は, 著者らの先行研究の結果をもとに, 中国・四国地方の, 病院の病棟に勤務する30歳以下の女性新人看護者のうち, 暴言・暴力の体験がある者を対象にグループアプローチを行い, 無作為化比較試験によりその有効性の検討を試みた.対象者を病院ごとに介入群と対象群に無作為割付けし, 2008年6月〜8月に介入群に対して暴言・暴力の体験後の認知とコーピングを主なテーマとしたグループアプローチを週1回, 90分/回, 計3回(3週間)実施した.評価は, 介入群, 対照群ともに介入開始前, 介入終了後, 介入終了3ヶ月後の3時点で実施した.調査内容は, 基本的属性, 外傷後認知尺度, コーピング方略尺度, IES-Rであった.分析方法は, 各評価尺度の得点変化量を従属変数とし, ベースラインで有意差のみられた項目を共変量とした二元配置の共分散分析を行った.その結果, 参加者は57名となり, 介入群29名と対照群28名に割り付けられた.体験率で最も多かったのは, 先輩看護者からの暴言であり, JPTCIの3因子「自己に関する否定的認知」「トラウマに関する自責の念」「世界に関する否定的認知」の各得点の変化について二元配置分散分析を行った結果, 全ての下位尺度に関して交互作用, 主効果ともに, 2群間に有意な差が認められなかった.コーピングに関しては, 「トーキング」「気分転換」は交互作用, 主効果ともに2群間に有意な差が認められた.「積極的行動」と「認知的回避」は群の主効果のみ, 2群間に有意な差が認められた.「ポジティブ思考」「思い任せ」は交互作用, 主効果ともに, 2群間に有意な差が認められなかった.今回, 外傷後認知とコーピングと重複する下位尺度が認められたため, 今後, コーピング方略に焦点を当てたグループアプローチを実施し, 検証を行うことが必要であると考える.
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