2009 Fiscal Year Annual Research Report
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた修辞表現の意味理解過程の解明
Project/Area Number |
20800001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柴田 みどり Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 学術研究員 (00507147)
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Keywords | 認知科学 / 神経科学 / 言語学 / 実験心理学 |
Research Abstract |
本研究では,比喩やアイロニーといった発話の非字義的理解過程に注目し,その理解過程が字義的な理解と比較してどのような神経基盤によって支えられているのかをfMRIを用いて明らかにすることを目的とした.具体的には,比喩やアイロニーといった非字義的理解を要する文脈と,字義的理解のみを要する文脈条件,および意味の逸脱した文脈条件を用いて,脳内の処理プロセスに違いがあるかどうかについて,fMRIを用いて課題遂行中の賦活領域を比較検討した.この2年度の間に得られた成果は以下の通りである. 1.比喩理解においては,字義的な理解に比べ,左の下前頭回(BA45)と内側前頭回(BA9/10)に大きな賦活を引き起こすことを示した.さらに同様の材料を用いて隠喩の理解過程と直喩の理解過程に違いがあるかどうかを,fMRI実験を行うことにより,字義的な理解と比較検討した.その結果,隠喩理解過程と直喩理解過程では左の下前頭回(BA45)と内側前頭回(BA9/10)などに類似した賦活が見られるとともに,字義文とは異なった賦活パターンを示すことがわかった. 2.アイロニー理解においては,字義的な理解に比べ,内側前頭回(BA9/10)や上側頭回(STS)に大きな賦活が見られたことを明らかにした.これらの結果より,比喩やアイロニー理解においては,矛盾した発話から,意図を推論するという高次の認知過程が関与していることが示された. 3.これらの検討から,推論が介在する発話の非字義的理解過程においては,内側前頭回(BA9/10)が関与していることが強く示唆された.
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