2009 Fiscal Year Annual Research Report
大規模連立一次方程式の高速求解技術の構築と並列固有値解法への応用
Project/Area Number |
20800009
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
多田野 寛人 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 助教 (50507845)
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Keywords | Block Krylov部分空間反復法 / 連立一次方程式 / 周回積分を用いた固有値解法 / Block BiCGGR法 / 格子QCD計筧 |
Research Abstract |
本研究課題は,複数本の右辺ベクトルをもつ連立一次方程式の高速求解技術の構築が主目的である.このような問題は,素粒子分野における数値シミュレーションや,周回積分を用いた固有値解法といった数値計算アルゴリズムにおいて現れる.これらの分野では,同連立一次方程式の求解がボトルネックになっており,高速化が望まれている. 複数本の右辺ベクトルをもつ連立一次方程式の求解法として,Block Krylov部分空間反復法がある。Block Krylov部分空間反復法は,Krylov部分空間反復法よりも少ない反復回数で近似解を得られる場合があり,この特長が計算速度の向上に繋がる.しかしながら,Block Krylov部分空間反復法で求めちれる近似解の精度は,計算過程で劣化する可能性があることが明らかになった. 本年度は,Block Krylov部分空間反復法の近似解精度劣化を回避するために,研究代表者は新たなBlock Krylov部分空間反復法「Block BiCGGR法」を提案した.Block BiCGGR法は,従来法であるBlock BiCGSTAB法とほぼ同じ計算量で高精度の近似解生成が可能である.Block BiCGGR法を周回積分を用いた固有値解法に適用し,従来のBlock Krylov部分空間反復法を適用した場合よりも,高精度の固有対が得られることを明らかにした.また,素粒子物理学で現れる格子QCD計算に対しても間法を適用することで,格子QCD計算の高速化・高精度化を達成した.右辺ベクトル数が大きくなると,アルゴリズムの挙動が不安定になる場合があるが,定常反復法による前処理を組み合わせることで不安定性を回避でき,Block BiCGGR法の適用範囲を大きく広げることにも成功した.
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