2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20800043
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
束原 文郎 Sapporo University, 文化学部, 講師 (50453246)
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Keywords | 課外活動 / 教育効果 / 大卒者 / キャリア形成 |
Research Abstract |
大卒者の労働適応と課外活動経験を考察する際,<体育会系>は極めて有用なキーワードとなる.これを直接主題として扱った研究がなかったため,教育社会学の先行研究の中から「<学校>から<仕事>へ」という<移行transition>に関する研究のいくつかを拾った上で,「学校の制度的・組織的な運動・スポーツ活動に継続的に関わること」という視点から理論的に検討した.大卒者の特徴を出すために,高校段階と大学段階に分けて検討したところ,高校段階では,社会一般的に職業選抜機能が学校に内属するという状況において,「運動部活動に継続的に参加すること」は「学校での正しい生活」として位置付けられた.教師は企業の目を持って生徒指導に当たり,また生徒もこの論理を内面化して就職を有利に進めようとした結果,<体育会系>の就職は他に比して有利となった可能性が示唆された. 大学段階でも同様に学内選抜の熾烈さが<体育会系>就職の優位を支えたとみられる.学歴社会批判から指定校制や推薦制の撤廃から自由公募制が導入されたものの,企業は選抜コストを低減しようとOBをリクルーターにする傾向があった.結果,学閥採用がアンダーグラウンド化して残存してしまった.こうした文脈の中で,熾烈な学内選抜を勝ち抜く戦略の一つとして<体育会系>運動部への所属があり,それが歳月を経て神話化したかのように類推された. 当初予定されていたハローワークへのフィールド調査は,経済状況の劇的な変動に伴う所員の多忙化により,実施することができなかった.そこで,就職支援企業へのインタビュー調査を行い,労働市場の現況と大卒者に課外活動を推奨することの有効性について貴重な情報を得た.今後は,これらの社会的事実を基点に,「学校の制度的・組織的運動・スポーツへの継続的な関わり」が,個人のその後の社会生活を説明する独立要因となるかを検証する実証研究へと歩を進めたい.
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