2009 Fiscal Year Annual Research Report
科学技術コミュニケーションの歴史社会学-科学技術社会論とメディア論の接合に向けて
Project/Area Number |
20800064
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
飯田 豊 Fukuyama University, 人間文化学部, 講師 (90461285)
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Keywords | 科学技術社会論 / メディア論 / 歴史社会学 / 科学技術コミュニケーション / メディアリテラシー / アマチュア / 公開実験 / コミュニティ |
Research Abstract |
科学技術社会論における「科学技術コミュニケーション」と、メディア論の薫陶を受けた「メディア実践」は、互いに問題関心を共有しつつも、まったく異なる学問的パラダイムのもとで今日まで展開しており、その理論的/実践的接合が急務である。本研究では、このふたつの思潮の接点を歴史社会学的に見出し、学際的な概念枠組みを構想した。 いずれの思潮も端的にいえば、00年代においては、社会構築主義的な分析にもとづく相対主義を踏まえて、そうした批判的視座を担保したうえで、あえて現場にコミットする実践的な態度が重視されるようになっている。そして、双方の知見を建設的かつ補完的に編みかえるための歴史社会学的分析のあり方を、本研究では二点指摘した。 第一に、双方におけるコミュニティ(共同体)論の展開を比較検討することである。たとえば、科学技術ジャーナリズムの系譜について、科学史や技術史の伝統のなかで綿密な研究が蓄積されてきたが、メディア史の理論的進展を反映した歴史分析は皆無であり、これからの重要な課題といえる。 第二に、このことを踏まえて、専門家と非専門家の中間共同体としての「アマチュア」をめぐる研究を再構築することで、その射程を拡張することが重要である。現在において、筐体への技術的介入に陶酔することを断念し、ブラックボックスを相対化する道筋のひとつを示しているのが、科学技術コミュニケーションやメディア実践の可能性である。情報技術/メディアのあり方を刹那的に異化してみせるワークショップやコンセンサス会議。こうした営みもまた、情報技術そのものの媒介的で中間的な性格を自覚したうえで、専門家と非専門家を媒介してみせる中間共同体たり得るという点で、かつてのアマチュア文化のアクチュアリティを再生し得るのである。
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