2009 Fiscal Year Annual Research Report
時間・空間情報を統合した生物の絶滅リスク決定要因の解明
Project/Area Number |
20810011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角谷 拓 National Institute for Environmental Studies, 生物圏環境研究領域, 研究員 (40451843)
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Keywords | レッドリスト / トンボ / 絶滅危惧種 / マクロエコロジー / 保全生態学 / 空間生態学 / 生物多様性 / 種間比較 |
Research Abstract |
日本トンボ学会の取り組みにより算出された、全国スケールでのトンボ57種の過去50年間での生息地数の減少にもとづく絶滅リスクと、各種の生態的特性との関係を解析し、止水性でかつ広い地理的分布をもつ種の絶滅リスクがより高くなる傾向にあることを明らかにした。また、生態的特性にもとづいて絶滅リスクの予測を行った。 さらに、全国スケールにおいて、農地を含む全グリッド(6×6km)で土地利用の不均一性を算出し、そこで記録されたイトトンボ類の種数との関係を分析し、農地を含む土地利用の不均一性がイトトンボ類の種数と正の関係を持つことを明らかにした。また、兵庫県の多数のため池で実施された網羅的な生物群集の調査結果を利用して、トンボの種多様性や機能群多様性および絶滅危惧種数が、富栄養化、生息地破壊、外来生物の侵入といった複数のリスク要因からどのような影響を受けているかを定量的に解析し、アオコの発生量が、外来魚(ブルーギル)の個体数やため池の護岸率など、ともに負の影響を及ぼす要因に比して特に強い影響を持つことを明らかにした。 このように、近年劣化の著しいウェットランドに生息する代表な生物群であるトンボ目昆虫をモデルとして各種の個体群減少率と空間分布を制限している要因との関係を複数の空間スケールにわたって検討することで、生物の絶滅リスクを高めるプロセス・要因や、それらの相対的な重要性を明らかにすることができる。これらの結果は、減少率などの時間的なデータが十分に得られない場合であっても絶滅リスクの信頼性の高い予測を行ったり、リスクを減少させるための効果的な対策を策定したりする上で重要な知見を提供するものである。
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