2009 Fiscal Year Annual Research Report
テレビドラマの政策資源性に関する実証研究:「北の国から」の地域振興効果を例に
Project/Area Number |
20810015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
八幡 耕一 Nagoya University, 大学院・国際言語文化研究科, 准教授 (10452210)
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Keywords | メディア / 地域振興 / テレビドラマ / 公共政策 / フィルム・ツーリズム / 評価 |
Research Abstract |
本研究の目的は、テレビドラマに潜在する社会的影響力を政策資源と捉え、それが過疎地域の社会経済振興に及ぼす効果を実証的かつ多角的に分析することである。地域振興効果に着眼したテレビドラマの研究は少なく、観光客増加を目論む地域的取り組み(ドラマ撮影の誘致など)とは裏腹に、学術的研究は後れてきたと言わざるを得ない。 具体的に本研究は、以下2つの取り組みで構成された。(1)テレビドラマによる地域のメディア表象が、視聴者の受容過程も含め、「どのように」かつ「どの程度」、地域の社会経済振興に寄与するかを分析するための手法(評価枠組み)を検討すること、そして(2)ドラマと地域振興の相関につき、テレビドラマ「北の国から」を事例に計量的な分析を試みた。 全シリーズの内容分析と関連する社会調査等の結果から、(2)の点については、特に観光客の増加という観点からは一定の相関があると考えられる。また、いわゆる「地域ブランド」化については、当該テレビドラマの長期的なシリーズ化が少なくない影響を及ぼしていること、それに応じた地域側の基盤整備や情報提供が相補的・相乗的に作用していることが強く推察された。その一方で、「北の国から」の成功には、脚本家を含む制作側の属人的な要素が多分に重要な役割を果たしていると考えられ、長期的な振興効果についてはさらなる見極めが必要である。 いずれにせよ上述の背景に鑑みれば、本研究はテレビドラマの学術的研究の一側面を補強するものとして、一定の意義を見出せる試みであったと考えられる。今後の課題としては、さらに事例を増やし、多角的な観点から分析手法(評価枠組み)の洗練化を進め、テレビドラマの制作資源的価値について、公共政策(政策科学)との架橋を意識した調査分析を重ねていくことが肝要と思われる。
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