2009 Fiscal Year Annual Research Report
小型飛行時間型質量分析計による高エネルギー衝突解離を用いた生体分子の構造解析
Project/Area Number |
20810018
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新間 秀一 Osaka University, 科学教育機器リノベーションセンター, 特任研究員 (30515896)
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Keywords | 質量分析 / 構造解析 / 高エネルギー衝突解離 / 糖鎖 / 生理活性物質 / 糖ペプチド |
Research Abstract |
本年度は高エネルギー衝突誘起解離法(HE-CID)を糖鎖分析に応用した.試料は血液中に含まれるIgGよ」り生成したN型糖ペプチドを用いた.糖ペプチドの質量は,2600~3000程度である.これらの糖ペプチドをイオンゲートでモノアイソトピックピークを選択することを試みたところ,十分な強度を保ったまま単一ピークを選択することが可能であった.さらに,選択したイオンをヘリウムガスとの衝突により解離させ,解離生成物の質量スペクトルを得ることが可能であった.得られたスペクトルを解析した結果,高エネルギー衝突誘起解離法では低エネルギー衝突誘起解離法(LE-CID)とは全く異なる解離パターンを示すことがわかった.具体的にはLE-CIDでは一般に糖鎖のグリコシド結合で解離することとフコースが存在した場合にフコースが脱離しやすいことが知られているが,本研究で行ったHE-CIDでは主に糖鎖のクロスリング解裂が主に観測されることがわかった.さらにフコースの脱離も観測されなかった.特にクロスリング解裂が観測されたことは,糖鎖の構造解析で問題になっている結合様式の決定が可能になることを示唆している.以上よりHE-CID法による糖ペプチド解析への有効性が示されたと考えている.さらにこの結果を発展させ,HE-CIDを用いた3糖体における修飾基(リン酸基)の結合位置決定を試みた.その試料では2つの予想される構造が提案されていた.その構造情報を元に,予想される解離様式を考えたところ,クロスリング結合による解離生成物が確認されれば構造決定可能だと考えた.したがって,既存の質量分析装置は一般的にLE-CIDであるため,既存装置では決定不可能ということになる.実際にHE-CIDによりスペクトルを取得したところ,予想したシグナルが得られ構造決定することが可能であった.
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Research Products
(10 results)