2009 Fiscal Year Annual Research Report
エチオピアにおける国家と民族関係再考:統合と分離の狭間
Project/Area Number |
20810030
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
眞城 百華 Tsuda College, 国際関係学科, 助教 (30459309)
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Keywords | エチオピア / 民族関係 / 近現代史 / エリトリ / アフリカ研究 |
Research Abstract |
本年度前期は、昨年度末に渉猟したイギリス外交史料の分析を行った。同時に夏のエチオピア、エリトリア調査の準備を進めた。夏の調査においては、エチオピア、エリトリア両国で史料収集と現地調査を実施した。両国とも史料の公開状況や閲覧に制限があったものの、両国関係の分析に重要な資料の少量を行うことができた。帰国後は、文献、イギリス史料とエチオピア、エリトリア両国で渉猟した史料の分析を継続して行っている。エリトリアをめぐる国際関係、またエチオピア中央政府のエリトリア政策がエチオピア中央政府のティグライ政策に多大な影響を及ぼしている点をイギリスの史料分析によりあきらかにすることが可能となった。また、エリトリアにおける政治運動は、イギリス軍政下から活発になり、エリトリア独立派、エチオピアとの併合派に諸政治勢力が分かれて政治対立の萌芽を形成していた。このエリトリア内の政争に対して、エリトリアの併合を狙うエチオピア政府の介入が行われた。ティグライにおいても、こうしたエリトリアとエチオピアの併合を睨んだ政治的対立の影響が現れており、ティグライ北部で、エチオピア中央政府主導によりエリトリアとの併合を企図するキャンペーンが行われた。当時のキャンペーンに参加した人々に対するインタビューをティグライ州において実施した。当時のティグライ地方政治については、帝政期の行政官の多くが社会主義政権下でティグライから離散したため、官報など政府資料から当時の行政官の配属などをあきらかにした。エチオピアとエリトリアの連邦制期からの両国関係については、政治への注目が集まるが、他方で本研究では両国間をまたがる人やものの移動についてもティグライ州において調査を実施した。統計などについても史料の分析を行っている。 本科研により、エチオピア・エリトリア関係をティグライという地域の文脈から捉えなおすことが可能となり、政治変動の裏で社会、経済においても大きな変容がもたらされたことがあきらかになった。今後は、こうしたティグライにおける政治、社会、経済変動が、1975年のティグライ人民解放戦線の結成とどう連関してくるのかを分析視角に加えたい。
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Research Products
(2 results)