2008 Fiscal Year Annual Research Report
人種マイノリティ統治技術の国内外への移転に関する歴史研究:米国の学校教育を事例に
Project/Area Number |
20810040
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宮下 敬志 Ritsumeikan University, 衣笠総合研究機構, 研究員 (50509346)
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Keywords | アメリカ / 植民地主義 / 帝国 / 学校教育 / 先住民 / アメリカ史 / ハンプトン農業師範学校 / 虻田実業補習学校 |
Research Abstract |
申請者は、近代世界において列強本国内の周辺地域や先発する植民地で形成された人種マイノリティ統治技術が、1.本国内の他の周辺地域、2.後発の植民地、3.他国の植民地に転用されていくという歴史的系譜を、米国近代史を事例に調査することを研究目的にしている。 当年度は、統治技術の一つとしての学校教育に焦点をあてながら、19世紀半ばの米国において解放黒人になされていた手作業教育中心の教育実践が、19世紀後半以降、教育者などの手によって、1.米国国内の先住民学校、2.米国統治下のフィリピン植民地学校、3.日本のアイヌ学校に転用されていく過程を調査した。 主に分析対象としたのは、解放黒人のための手作業教育を主とする学校として成立し、その後先住民教育に進出した結果、米国の人種マイノリティ教育全体のモデルとなった1.ハンプトン農業師範学校、20世紀初頭の植民地政策決定者によってハンプトン式カリキュラムの転用が行われたフィリピンの2.マニラ師範学校、明治期に同校で学んだ日本人が作ったアイヌ学校である北海道3、虻田実業補習学校の三校である。 4月から7月までは、分析対象を定めるために、各国植民地における人種マイノリティ統治に関する文献を読み込んだ。その結果、統治技術のうち、各国の人種マイノリティ学校が行った教育実践とその転用過程を分析するという着想を得た。これについては、論文集『グローバリゼーションと植民地主義』で概要を発表した。8月は、ハンプトン校の史料の分析にあてた。研究に必要な資料は、ニューヨーク公立図書館などから入手できた。9月は、先住民学校についての研究成果の整理と公表に力を入れた。10月〜11月は、ハンプトン校と虻田校とで行われた教育実践の比較分析を進めた。10月末に行った北海道調査では、虻田校に関係する未公刊史料を発掘した。12月〜3月は、収集した資料を読み進め、成果の公表のための準備に費やした。
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