2009 Fiscal Year Annual Research Report
光によるスピン量子制御実現に向けた半導体量子構造での光応答の理論解析
Project/Area Number |
20810042
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
力武 克彰 仙台高等専門学校, 情報システム工学科, 助教 (50515145)
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Keywords | 量子情報通信 / 量子リピータ / 量子状態転写 |
Research Abstract |
半導体量子ドット中の電子スピンはマイクロ秒オーダーのコヒーレンス時間を持ち、固体素子での量子情報デバイスを実現できる系として有望視されている。量子性を保ったまま、電子スピン状態を高速かつ高精度に制御する方法として、光パルス照射によるスピン状態間のラマン遷移を用いる手法が考案させている。また、量子的な重ねあわせにあるスピンを生成するため、光の偏光状態を電子スピン状態へ転写する手法も提案され、実験的な実証も行なわれてきている。平成21年度では、半導体量子構造における光学応答とスピンのダイナミクスを用いた電子スピンの量子制御、特に光子から電子スピンへの量子状態の転写手法について、理論的提案とその解析を行った。タイムビン符号化を用いて量子状態が載せられた光子量子ビットの波束形状の特徴と、磁場が印加された半導体量子ドット中での電子スピンのラーモア歳差運動とを連動させる事により、光子から電子スピンへの新たな量子状態転写手法を提案することができた。タイムビン符号化は光ファイバによる長距離間での量子情報の伝達に向いた符号化であるため、本研究で提案したタイムビン符号化光子からメモリとなる電子スピンへ直接量子状態を転写するという手法は実用的な量子リピータ実現に対して貢献するものとなる。また、光キャビティに結合したGaAs量子ドットを解析モデルとして、転写過程のダイナミクスを理論的に解析することにより、忠実度の高い転写を行なうためのデバイス条件を明らかにする事が出た。なお、このタイムビン量子状態転写は、偏光状態からの転写で用いられていた複雑な光学遷移を必要とせず、離散準位と単純な光学遷移をもつ一般的な電子系に適用可能である。今後は他の固体素子、特にダイアモンドNV中心を用いた系について、具体的な転写手法について検討してゆきたい。
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