2008 Fiscal Year Annual Research Report
RNAから見た世界最深部生命圏の微生物に関する研究
Project/Area Number |
20810047
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
堀 沙耶香 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 極限環境生物圏研究センター, ポストドクトラル研究員 (20470122)
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Keywords | RNA / 群集・生態系多様性 / ゲノム機能・発現 / 深海 / 微生物ゲノム / 遺伝子多様性 / 環境徽生物 / 分子生物学 |
Research Abstract |
暗黒の深海の大部分は貧栄養、低温(0.5〜4℃)の静的環境である。生命活動には不利に思える深海静的環境だが、地殻内には地球の生物量の半分にも匹敵する微生物が棲息している。つまり、深海の静的環境に棲む微生物の理解は、地球規模のバイオマスの解明に必要不可欠である。本研究では、深海底泥に棲息する微生物群の遺伝子発現をRNAによって解析し、微生物の生態系や、代謝や遺伝子発現レベルでの極限環境適応機構の解明を目的とする。 本年度は、mRNAライブラリー作製に向け、予備的に一般土壌RNAを用いたバクテリアmRNAの濃縮を試みた。MICROBExpress Bacterial mRNA Purification Kit(Ambion)の通常プロトコルでは16S,23S rRNAの除去は不十分(除去率;35%以下)だったため、反応温度に勾配をかける等の検討を行い、除去率を60〜70%まで向上させることに成功した。しかし、逆転写産物からmRNAは1つも得られなかった(0/43)。なぜなら、残存の16S,23S rRNA(5,9/43)に加え、18S,28Sやその他のrRNAばかり得られたためである(10,6,13/43)。そこで次に、電気泳動により物理的にrRNAのバンドを切り出す新たな除去法の確立を試みた。現在、変性アガロースゲルや変性ポリアクリルアミドゲルからの切り出しと、フェノールゲル抽出法やカラム精製等の併用を試しているが、回収率の低さや、回収RNAから逆転写産物ができない(RNAの分解や、混入試薬による反応阻害)等、現在検討中である。本手法は、遺伝子発現パターンの全体像を明らかにするmRNAの網羅的検索への試みであり、深海静的環境でのアクティブな微生物生態系や、極限環境適応機構に関する世界最先端の知見が得られると考えられる。
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