2009 Fiscal Year Annual Research Report
RNAから見た世界最深部生命圏の微生物に関する研究
Project/Area Number |
20810047
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
堀 沙耶香 Tokyo Women's Medical University, 医学部, 助教 (20810047)
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Keywords | 微生物 / 生態系 / 極限環境 / RNA / 遺伝子発現 / 深海 / バクテリア |
Research Abstract |
静的な超深海環境に棲息する微生物生態系と、その場における代謝系、遺伝子発現レベルでの極限環境適応機構の一端を明らかにする目的で、超深海底泥から培養を介さず直接全RNAを抽出し、2種類のcDNAライブラリー(16S rRNA、mRNA)の作製を試みた。世界最深部マリアナ海溝底泥は、大深度小型無人探査機「ABISMO」により採泥された(北緯11度22分;東経142度43分;深度10350m;2008年)。しかし、底泥からは1g当たり僅か数ngのDNA(微生物細胞約10^6個相当と推定)しか抽出されず、微生物が予想以上に微量であることが示唆された。そこで、まずは1g当たり約150~300ngのDNAが抽出できる伊豆-小笠原海溝静的超深海底泥(北緯32度47分,東経141度52分;深度7111m;2007年)を用いて予備実験を行った。その結果、16S rRNAライブラリーでは、主にα、γ、δ-proteobacteria、Acidobacteria、Gemmimonasが検出された。この海域には巨大底生有孔虫(ゼノフィオフォア)が多数棲息していたが、ゼノフィオフォアを含む底泥は付近の底泥よりChloroflexiの割合が有意に少なかった。よって、地質学的に静的な環境でも、大型の生物との共存により、活動状態にあるバクテリアが不均等に分布していると示唆された。一方、mRNAライブラリーの作製では、保存領域と上記ライブラリーで得られた配列を利用したrRNA除去法、アガロースゲルやアクリルアミドゲルからのmRNAの回収等を試したが、rRNAを完全に除去することはできず、mRNA配列は得られなかった。微生物多様性が高い環境では、rRNAライブラリーで予測された菌が持つ代謝系に関わる遺伝子群を網羅的にRT-PCRする手法が有効だと考えられる。
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Research Products
(2 results)