2008 Fiscal Year Annual Research Report
マイトラーヤニー サンヒター「祭火の礼拝」章訳注研究
Project/Area Number |
20820004
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
笠松 直 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 専門研究員 (40510558)
|
Keywords | ヴェーダ / インド学 / 宗教学 / 古代宗教 / 原典翻訳 / 民俗学 |
Research Abstract |
『マイトラーヤニーサンヒター(以下MS)』(前800年頃)訳注研究の初年度である。インド学・宗教学(ゾロアスター教)・歴史学関係図書, 諸種辞書等約80冊の図書及び両面プリンターを購入し, 収集した希少資料のコピー約20冊分を製本(→物品費), 研究環境を整備した。資料収集と論文コピーに学部生1名の助力を得, 博士課程院生1名に原典調査とデータ入力・提供を依頼した(→謝金)。成果は雑誌論文2編である。 「Maitrayaui Sauhita「祭火の礼拝」章の構成について」(『印度学仏教学研究』57-2, 5頁)ではMS「祭火の礼拝」章の概要を報告, 祝詞部分と散文部分との間に見られる齟齬を指摘し, 分析した。同箇所は一部『カータカ・サンヒター(KS)』と相似する特異な祝詞構成法を伝えるが, これはMSがKS説を受容した結果と推論される。本稿は当該儀礼最初期の形成過程に光を当てるものである。本稿作成に当たっては, 特に最近の祭式綱要書訳注研究書, 祭式用語辞書等が役立った。「マヌと五人の息子たち」(『論集』35, 11頁)では, MSが伝える焚き木投入儀礼を巡る起源説話を分析した : 1から10までの自然数を足し合わせる計算の工夫(10+(9+1)+(8+2)+(7+3)+(6+4)+5=10×5+5)を財産相続を巡る異腹兄弟間の同盟戦略の枠組設定に転用, 余りの5人の勝利(と, 当然予想されるその後の繁栄)は当時「全人類」を意味した慣用表現「五つのマヌの子孫たち」の説明ともなる。本稿は宗教学,説話研究の分野にインド最初期の散文文献の伝える興味ある説話資料を提供することとなろう。
|